DeFiの王であるCurveの信頼を失墜させた歴史に残る事件「Vyperの乱(勝手に付けました)」から二夜明け、Curve Financeを取り巻くさまざまな動きがオンチェーンおよびオフチェーンで観測されています。混乱の中で少額から巨額の富を得たウォレット、この事態に対応するための議論でてんやわんやしてるプロトコル。
他には明らかになってきた事態の全容に🦙が激怒していた件など、話すと長くなるほど色々ありましたが、個人的に面白いと感じたのは大量の$CRVの擦り付け合いとも捉えられかねない大規模なOTCの数々です。
一連の流れと関連して起こったことを、ここ数日パンクしそうで脳内ストレージが足りないので整理がてらまとめてみることにしました。
すべてのOTC取引リスト
CurveのCEOであるMichael Egorov㌠のウォレットを見ていると面白いですね。一通り行われたOTCを一巡するところから始めましょうか、全部で15ウォレット(8月3日3時時点)でした。Michael㌠のウォレットアドレスは以降「㌠」と表記します。
① ㌠ → 0xf510…
取引総量: 17,500,000CRV
1回目: 37.5CRV
2回目: 2,499,962.5CRV
3回目: 2,500,000CRV
4回目: 2,500,000CRV
5回目: 2,500,000CRV
6回目: 2,500,000CRV
7回目: 2,500,000CRV
8回目: 2,500,000CRV
② ㌠ → Justin Sun
取引総量: 5,000,000CRV
③ ㌠ → 0x4D3e…
取引総量: 2,500,000CRV
④ ㌠ → DCF GOD
取引総量: 4,250,000CRV
⑤ ㌠ → 0xcb5a…
取引総量: 1,250,000CRV
⑥ ㌠ → DWF Labs
取引総量: 12,500,000CRV
1回目: 1CRV
2回目: 2,499,999CRV
3回目: 10,000,000CRV
⑦ ㌠ → Cream Finance
取引総量: 2,500,000CRV
⑧ ㌠ → machibigbrother.eth
取引総量: 3,750,000CRV
⑨ ㌠ → 0x9dbf…
取引総量: 250,000CRV
⑩ ㌠ → 0xb0b8…
取引総量: 2,500,000CRV
⑪ ㌠ → c2tp.eth
取引総量: 2,500,000CRV
↑ 日本時間8月1日
↓ 日本時間8月2日
↓日本時間8月3日
⑭ ㌠ → 0x5Aae…
取引総量: 2,500,000CRV
⑮ ㌠ → 0x0030…
取引総量: 10,000,000CRV
1回目: 5,000,000CRV
2回目: 5,000,000CRV
※記事公開時間の都合により8月3日3時時点までの取引を現在はまとめています。
キニナルウォレットあるね
おっと、Arkhamを見ていたらMichael Egorov㌠のウォレットが他にもあったのでリストにしておきますね。
OTC取引をした一連のウォレットをリストアップしましたが、なんかキニナルウォレットがいくつかあったので詳細を調べてみましょう。
また今回の取引について0.4ドル/枚でコールオプションとロックアップ期間ありとの情報もあったので受け取ったあとのCRVをどう使っているのか、それぞれのウォレットのオンチェーンデータを調べてみます。
※記事公開時間の都合により8月3日3時時点までの取引を現在はまとめています。
① ㌠ → 0xf510… のその後
Binanceの入金用アドレス(0xf825…)に55,000CRVを送付
新規アドレス(0x23f7…)にbatchTransferで17,443,650CRVを送付
0x23f7…は0x71fF…から48秒前に56,238CRVを受け取る
0x71fF…は定期的にBinanceとOKXのホットウォレットからCRVを引き出しておりこのタイミングで一気に動かした
0x00fb…へ移動した17,499,988CRVは動きなし
② ㌠ → Justin Sun のその後
動きなし
③ ㌠ → 0x4D3e… のその後
動きなし
④ ㌠ → DCF GOD のその後
1,000,000CRVを1,090,346.985966301cvxCRVにスワップ
600,000CRVを648,943.239207661yCRVにスワップ
648,943.239207661yCRVを502,678.238584589st-yCRVにスワップ
150,000CRVを159,230.930888203yCRVにスワップ
2日前作成のアドレス(0xa9c8…)に1,250,000CRVを送付
250,000CRVを263,464.861036787yCRVにスワップ
422,695.791924991yCRVを327,403.791394895st-yCRVにスワップ
250,000CRVを266,891.094082441cvxCRVにスワップ
250,000CRVを266,106.925658569cvxCRVにスワップ
500,000CRVを530,160.511160298cvxCRVにスワップ
この時点でOTC取引で購入したすべてのCRVを何らかの資産に変換済み
⑤ ㌠ → 0xcb5a… のその後
動きなし
⑥ ㌠ → DWF Labs のその後
⑦ ㌠ → Cream Finance のその後
creamcrvlocker.eth(0x13B5…)にすべての2,500,000CRVを送付
2,000,000CRVをCurveのVoting EscrowにLock
500,000CRVを531,986.11430624cvxCRVにスワップ
⑧ ㌠ → machibigbrother.eth のその後
3,750,000CRVすべてをCurveのVoting EscrowにLock
⑨ ㌠ → 0x9dbf… のその後
動きなし
⑩ ㌠ → 0xb0b8… のその後
動きなし
⑪ ㌠ → c2tp.eth のその後
2,500,000CRVすべてをVoter Proxyを通じて2,500,000cvxCRVに変換
実際には以前から保有していたCRVも合わせて2,510,116.78265288CRVを一度に2,510,116.78265288cvxCRVに変換
実際には以前から保有していたcvxCRVも合わせて2,519,839.23906953cvxCRVを一度にstake
⑫ ㌠ → ychad.eth(yearn finance)
動きなし
⑬ ㌠ → Stake DAO
1,250,000CRVすべてで1,250,000.35609996sdCRVをmint
これは救済か乗っ取りか
OTC取引に応じたウォレットの持ち主や買った後の動きを見ていると、次のような傾向があると分析できます。半分があまり時間が経っていないことにより、何もしていないですが、動かしている人たちはConvexでStakingしたり、CRVをCurveにロックしてveCRVにしたりしていますよね。
直感的にこんな大変なときだからこそCurveエコシステムに貢献したい的な、一種の救済措置かな?とか思ったんですが、よくよく考えたら買い手からすれば、Curveのガバナンスを従来より安く制御することができるチャンスでもありますよね。
Curve WarなどのToken War系全般に言えてますが、Warの基盤となるプロジェクトのガバナンストークンの重要度は偉大で、多重化した複雑なインセンティブ構造を生み出しています。自身のトークンを有利にCurve上で流通させたかったり、通常の手段で流動性を増やせないプロジェクトなどが興味を示し購入しているかもとか。
余波は大きく長期化も
今回の一件はCurveでのExploitを起点に起こりましたが、DeFiの中でも最大規模の知名度を誇り、信頼度、TVL共にかなり高かったので影響の波が他のプロトコルやDeFiエコシステムにまで押し寄せています。これはFTX事件の時の信頼失墜と似ているかもしれません。
まずはDeFi市場全体からの資金の流出、こういうことがあったら基本的にお金抜いておこうとなる人が多いです。Curveということもあってか、Exploitの被害規模の割にかなり大きく騒がれましたので。FTXのときの同様にCeFi(主にCEX)からの大規模な資金流出が起こりました。
DefiLlamaのデータによると事件直近の8月30日時点で494.7億ドルあったTVLが、9月2日時点で460.77億ドルまで減少しています。6.9%の減少率で、額は33.93億ドルにも上ります。日本円にすると約4,865億円なので結構な額ですよね。
特に代表の㌠がCRVを担保にいくつかのクリプトを借りていたため、Lending系のプロトコルから資金を退避させる流れはすぐにやってきました。なにを理由にかは忘れましたが、ふらっと8月1日にAAVEを覗いてみたんですがステーブルコインのSupply APYが軒並み高騰していましたのを覚えています。
一般的には借り手の需要が増したときに供給不足で金利が高くなりますが、今回の場合は資金退避が原因で供給量が大幅に減ったことによる金利の高騰でした。実際まとまった資金が抜けてますし、DeFi全体のTVLと同期間での比較で、15.05%の減少、約1,312億円の流出です。
まとめ
ほんとこの界隈は話題が尽きないですよね。そしていつも思うのが混乱の中でめちゃんこ稼いでるウォレットがあるということ。この記事では時間の都合で書けませんでしたが、「Voltz」を使ってめちゃ稼いだ人と、「alETH」のやつもぜひ時間があればTwitter、いやXで調べてみてください。
気づけば外が薄っすら明るくなってきたのでそろそろ寝るとしましょうか。こんな書き溜めを最後まで読んでいただきありがとうございました、ではまた明日。