【更新】8月30日13時、タイトルを「Permissioned on Permissionless」から「KYCed DeFiの可能性と未来」へ変更ました。
中央集権か非中央集権か、CeFiやDeFiという言葉があるように主にDAppsの金融領域においてその用語の使い分けはオンチェーンかオフチェーンかで明確に分類されています。もう一つオンチェーンでネットワークが分散していても、Permission型なのかPermissionless型なのかでもチェーンやDAppsを分類できますね。
一般的なDeFiやブロックチェーンはPermissionless、いわゆる非許可型と言われる誰かの許可が必要なくみんなが利用できるモデルです。一方で本人確認をしたユーザーや特定の管理者などによって決められた人しか利用できないモデルをPermission型、日本語では許可型と呼ばれています。
今回はそんなPermissionless型のUniswap上にPermission型の市場を作ろうとしている「Blue.fi」について紹介したいと思います。
昨日の話の続き
先日の「トークン化はギャグ」の記事を読んでいただきありがとうございました。深夜の投稿にも関わらず過去最高記録と良い争いをする速度でたくさんの方に見ていただいた上に、リプなどでもたくさんのコメントをいただけて嬉しいです。
やはりオンライン化できているものを「わざわざ」オンチェーン化する意味について疑問を持たれる方が自分の周りでは多かったみたいなので、そこに関して金融の視点からもう少し深掘りして解説したいと思います。
基本的に「株式」や「債権」などの金融商品はさまざまな課題から約定日と決済日のずれが生じます。それらのずれを表す用語として「T+n決済」という言葉が使われています(nに差分の数字が入ります)。日本の金融商品を例に見てみましょう。
T+0取引: GCレポ取引
T+1取引: 日本国債
T+2取引: 日本株、2018年までの日本国債
T+3取引: 2019年までの日本株
現在米国の金融業界では決済スパンの短期化を目標にしているものの、T+1決済を大半の金融商品で目指し、まだT+0決済は実現していません。ちなみに昔はT+5決済だったもののT+3決済への移行が1995年に行われ、GamestopなどのMeme銘柄乱高下を受け、債権と同じT+1決済への移行が2024年5月に施行されます。こう言った中で決済スパンの短期化のメリットとともに複数のデメリットが挙げられています。
データ送受信をリアルタイムに行う枠組みであったり、それらのデータや決済の整合性の問題だったり。でもこれらの課題はブロックチェーンを使うことで難なく解決でき、T+0取引を実現できるわけです。個人的にはここがトークン(オンチェーン)化の非常に大きなインパクトの一つだと考えています。
Blue.fiとは
Blue.fiではPermissionlessな一般的なDeFi上で、Permission機能を付与した取引を提供する「Blue Network」を提供しています。BinanceやChainlinkのような名だたる企業からアクセラレーターを受けており、直近ではBlockchange VenturesとFenbushi Capitalをリード投資家とし、DoraHacks、Knollwood Investment Advisory、Gate.io 、Wave Financialの6社からシードラウンドでの資金調達を行いました。
コンプライアンスチェックを後付け
Blueの特徴的な機能の一つは、取引者及びウォレットのコンプライアンスチェックをcontractレベルで後付けしている点にあります。機関投資家向けのPermissioned DeFiでは従来はprotocolレベルで区分けするアプローチが一般的でした。
そこでBlueでKYC及びAMLなどが完了したウォレットに「BlueID」というCredentialを発行し、BlueIDを持ったウォレット間のみでswapやtransferが可能な「Safe token」という既存のERC20をwrapしたトークンを発行することにしました。
まずBlueではKYC及びAMLが完了したユーザーのみ発行可能な「Safe token」なるものがあります。これはPermissionelessなprotocolの仕組みを利用したPermissioned DeFiを構築可能にしたのです。これめちゃくちゃ賢いって思いませんか?
なおBlueIDの検証もSafe tokenのcontractレベルで行っているのでprotocolの変更も必要なく、UniswapやCurveなどといった一般的なDeFiで利用可能です。
ちなみに視覚的にトークンを識別するためにはtickerが変わるようになっていて、wrapした元々のトークン名の後に「.safe」がつきます。例えばUSDTをwrapしてSafe tokenにしたら「USDT.safe」でDAIをwrapしてSafe tokenにしたら「DAI.safe」のような感じです。
もう使えるの?
Blueは現在誰でもがpoolを作成可能なわけではなく、指定されたフォーマットに沿ったフォームを入力した方のみが利用できます。また一般向けに提供されていないことから初期利用のボーダーは10,000ドルに設定されています。対応しているDeFiとpoolの設計は以下の通りです。
どのprotocolを使うか
Uniswap、Curve、balancer、Sushiswap
一緒に流動性を組みたいトークン
自分が発行したトークンの名前とシンボル
どのトークンと流動性を組みたいか
ETH、WBTC、USDC、USDT、DAI
どのコンプライアンスを実施したいか
KYC/KYB、AML、米国居住者かを判定(米国居住者が利用できないようにする)、米国認定投資家かを判定(米国認定投資家のみOK)、適格な購入者がどうか(Qualified Purchaser)、プロの投資家かどうか(Professional Investor)
矛盾しない項目は複数選択可能
手数料率の設定
0.1%、0.3%、1%、任意の手数料率
どのコンプライアンスプロバイダーを利用するか
自身のサービスで実施しているコンプライアンスチェックを利用するか、 BlueIDを利用するか
初期流動性が10,000ドル以上あるかどうか
これらの情報をメールアドレスとともに送信するとチームが対応してくれます。
メリットとして挙げられるのは自身の発行しているトークンを取引する顧客の管理を行いたい場合や、マネーロンダリングに関与する間接的なリスクからの回避には非常に有用だと感じています。
一方でOndo Financeも然りで、こう言ったプロダクトのデメリットと言いますか私たちの手の届かない原因して機関投資家向けに設計されているのであんまり身近に感じない点かもしれません。もちろんこのようなコンプライアンスが必要なのはTradFiってのはわかっていつつ、プロダクトを触りたい人間としてはちょっとつらいですね。
まとめ
DeFiの話をしているとまあ規制面やTradFiの参入などが話題になりますが、こういったいわゆる「CeDeFi」や「KYCed DeFi」としての共存は大いに可能性がある得ると考えています。
なぜ今日この「Blue」の話をしたかってところにもつながるんですが、昨日の話と冒頭の補足につながるTradFiのコスト削減や実現が難しかった設計にブロックチェーンが相性がいいということなんです。
まだKYCed DeFiが一般的ではないものの、確かカストディアンの「Fireblocks」とかがなんかを提供していたような気がするんですよね。まだ勉強不足なのでここら辺の話も明日以降どこかで話せたらなと思ってます。
昨日そういえばBalancerの話をするとか言っておいてこっちに切り替えて申し訳ないです。基本的に「昨日の話の続き」から書き始めるんですが、そっちの話の内容とか流れにひっぱらがちで笑笑 この話するなら一応書いときたいなこれ、みたいな感じでいつも有言実行できてませんがお許しを、、
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