みなさんこんにちは、深夜の独り言ニュースレターの時間です。昨日一昨日と規制関連の話をしていたので、もう少しCrypto業界の規制周りを話させてください。
アメリカを筆頭に先進国で暗号資産に対する規制の枠組みが検討される中、EUで来年2024年に施行される予定の暗号資産市場規則「MiCAR(The Markets in Crypto-Assets Regulation)」のDeFi規制の内容の見解を、PayTechLawが投稿しました。
今回はPayTechLawの「“Fully” decentralised DeFi under MiCAR」を要所で翻訳し解説しながら、一緒に読み進めていきましょう。
はじめに
まずこの話題の結論から申し上げると、取引において仲介業者を介すことなく運営され完全に分散された状態で提供される暗号資産関連サービスは規制から「除外」とあるのです。しかしこの長い条件を満たせるのはどれなのか、そしてその中でも「完全な分散化」とは何を意味するものなのかを知る必要がありますよね。
そもそもアメリカの状況を見ているとUniswapなどのDeFiは既に自分たちの管理下に置こうとしているので、少し対岸で方向性にズレがあるようです。この規制がそもそもユーザー体験を阻害するものなのか、それとも正しい普及の上で通らないといけないマイルストーンの一つなのか。
技術的な側面から見てみる
DeFiのDeは「Decentralized」でありながらも、本当に「分散」や「非中央集権」と断言できますか?一言で分散と言っても「どこ」が分散しているのかを基準にいくつかのモデルに分類することができます。
重要な役割の部分を切り取って話すと、DeFiの分散化とはスマートコントラクトベースで動いている仕組み的な部分と、ガバナンスの人的な意思決定の部分の2つです。
技術的な仕組みの部分では採用するチェーンでもさまざまなstack layerがあり、例えばsettlement layer、asset layer、protocol layer、application layer、aggregation layerなどと言った感じです(一般的なexcution layerやsettlement layerの方の区分ではなく役割の名称としての分類です)。
そして各layerを活用しDeFiに独自の分散化コンポーネントを提供しています。例えばガバナンストークンはasset layerで発行しているみたいな感じで。そして特定のDeFi protocolの管理機能を持たせており、proposalの作成と投票に利用します。
こういった要所での分散化を表に出して「Decentralized」と言ってる一方で、一部では「Centralized」、いわゆる集局化が進んでいるとこともあります。例えば最近ではupgradableなcontractが当たり前に利用されていますが、これは果たしてDeFiが分散管理されていると言えるのか、というもの。
一部のコアメンバーの意思決定のみで改変が可能である構造は何かが起こったときのセーフティネットにもなりますが、その仕組みへの根本的な疑問は一部議論になっています。これらのことを踏まえた上で、DeFiを3つに分類してみます(weforum.org: Decentralized Finance(DeFi) Policy-Maker Toolkit)。
“Centralised” DeFi(中央集権的なDeFi)
運営者やエンジニアがガバナンスを制御し自由に変更可能なモデル
Partially decentralised DeFi(部分的に分散化したDeFi)
ガバナンスが限られた人のみに与えられているモデル
Fully decentralised DeFi(完全に分散化したDeFi)
ガバナンストークン所有者によって、DAOなどを通じた意思決定を行い運営を独立して行うモデル
MiCARの定めるDeFiの未来
ここからはMiCARが定義しているDeFiを見てみましょう。MiCARでは「部分的に分散化したDeFi」と「完全に分散化したDeFi」を明確に区別しています。
MiCARの解釈する「Partially decentralised DeFi」
MiCARのRecital 22によると、「規制は自然人および法人または他の特定の事業、およびそれらによって直接的または間接的に実行や提供、管理を行っている暗号資産関連サービスの活動に適応するべき」とあります。要するに部分的な分散化は規制の適応対象になりうると。
MiCARの解釈する「Fully decentralised DeFi」
MiCARのRecital 22によると、「暗号資産関連サービスが仲介者をなくして完全に分散して提供される場合は本規制の対象となるべきではない」と。そして「暗号資産の発行体が識別可能ではない場合、規則のⅡ、Ⅲ、Ⅳのいずれにも含まないべきである」とあります。要するにprotocolが発行するようなトークン(例えばDAIやcrvUSD、stETHなど)基本的に規制の対象外になる可能性が高いと考えられます。
ここから考えられることはまず「一部分を分散化しただけで規制を免れるための理由にはならない」とぶった切っているところです。DeFiと謳ってなんでもありだった過去を考えるとDeFi全体を規制せずに「良いDeFi」と「悪いDeFi」をちゃんと分類して枠組みを作ってくれるのはほんとに嬉しいことです。
一方でこれらの「仲介者」が何をしている人たちを指すのかは依然として不明瞭なまま残されています。分散をもたらすためには権限を持った人が必要な訳でフェーズ的に特定の人に頼らないといけないケースもあります。
それなら「ステーキングを部分的な分散」とみなすのか、「レンディングを部分的な分散」とみなすのか。という内容に対してまだ「完全な分散化」の定義が確定していないので法的機関が一律に答えることは不可能です。
実際のDeFi運営を分解すると絶対にガバナンスを「制御」しないといけないタイミングはあるのでそれをどこまで許容し「分散ではない」とするのか。一般的にDeFiでなにか問題が起こった際に運営的役割のエンジニアやファウンダーが支配的に行動しないとより攻撃されたり、資金がさらに流出する可能性があったりなんてこともある訳です。
でもそれらの行動を加味しているとすべてのprotocolが「部分的な分散」になりますし、そもそも本当に完全に分散化された状態で持続できるDeFiはほぼないのでどう解釈するのか、、、
上記を踏まえた上で完全な分散により近づくためには、トークンベースのガバナンスを用いて投票権の偏りが起こらない分配を行うこと。もしくは委任形式をとって部分的な分散に近い運営ではあるがトークンは分散して保有されていること、が最低条件になりそうです。これを実際に実現できているDeFiはどのぐらいあるでしょうか?
さいごに
まだ現時点で完全な分散化の定義が完全に定まったわけでもないので、今のうちから想定されるケースを考えておく必要がありますが、最終的にどこにボーダーを引くのかはかなり気になりますよね。いろんなDAOの失敗と成功を見てて思うのは、SubDAOとかCouncil、委任投票が増えてきている現状を見るとやっぱ専門的なことは詳しい人に任せたほうがいいよねってこと。
最近は物騒なexploitが増えているのを見ていると、DAOの判断を仰いでからprotocol停止措置なんてのは普通に無理で。ここからは実質的な権利を持っている人たちをどう監視していくかの問題なので、むしろ人が見える企業が介入して運営していたほうが何倍もいいような気も。正直なんやわからん実在しているかもわからん人の顔写真とLinkedInよりは何倍か安心です。DeFiにはpermissionlessの利点で十分に差別化できているのでグラデーションのある運営方法はこれからも模索していきたいです。
さてさて本日もみなさん読んでいただきありがとうございます。実は明日でこのニュースレターも始まって1ヶ月なんです、、飽きっぽい自分がこんなに続けてこれたのは見てくれてる方のおかげですまじで!
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まじで皆さんには感謝しているので少しでも参考になったな、読んで面白かったなと思える独り言をこれからも配信していきます。先程のPVと登録者の比率を見ても分かるように大半の方がまだメールアドレスを登録してくれていないみたいなので、ぜひこれを機に1ヶ月前日のお祝いも兼ねて登録いただけると嬉しいです!
では明日もこのニュースレターでお会いしましょう。