お久しぶりです、去年の10月から本業が忙しく数ヶ月間のお休みを頂いていましたが程よく安定してきましたのでまたまた脳内アウトプットとしてこのニュースレターを使うことにしました。会うたびに「ニュースレターまだですか?」と言ってくれている方もいたので、このタイミングで再開できて自分も嬉しく思います。とはいえ前のような毎日投稿の頻度に急に引き上げるのは難しそうなので、やんわり再開したって感じで捉えていただけるとひとまずは助かります!
久々に戻ってきて一発目に書く内容は、ちょっと鮮度の落ちた話題ですが、最も取引量の多いDEXで有名な「Uniswap」を開発する「Uniswap Labs」に届いたSECからの戦線布告であるWells noticeについて、Uniswap Labsのブログで公開された文章をもとに解説していきます。なんか「Uniswap vs SEC」が起こっていて云々の粒度から、今後どのようなことが起こる可能性があるのか、そしてUniswapは過去の判例から見ても刺される可能性があるのか、について書きました。
Wells noticeとは
まず本文を読み進めていく中で、何度も登場する「Wells notice」についての解説します。まずWells noticeは、SEC(米国証券取引委員会)によって発行され送られてくる書面のことで、何等かの証券法関連に違反していることを踏まえ、強制的な訴訟を予定していることを示唆するためのものです。名付けられたのは昔の話、1972年当時のSECが実務方針を見直すために内部で立ち上げたWilliam Casey氏が指揮を取る「Wells Committee」が名前の由来です。
この通知を受け取ったということは近い将来に民事訴訟されることを意味し、30日間だけ反論することが可能ですが、多くの場合これを受け取った時点でSECからの戦線布告を意味し、長い戦いになるケースが多いです。
Uniswap Labsとは
次にUniswapを開発している会社についても解説します。Uniswapを開発しているのは冒頭からでてきている「Uniswap Labs」という会社、米国のニューヨークに拠点を置いています。代表者はHayden Adams氏で、業界でも名が知れていますよね。
当時、機能的、そして理論的に実現可能とされていた「AMM(Automated Market Makers)」の仕組みを実装した「Uniswap Protocol」を生み出し、Ethereumの25%のブロックスペースを利用し、2,000回以上もフォークされるなど、ブロックチェーンエコシステムの発展に大きく貢献してきました。
公式発表の解説
Uniswap Labsは4月10日、日本時間の3時半頃、ブログの更新とXのポストにてSECからWells noticeを受け取ったことを明らかにしました。トークンの持つ性質や、販売方法についての言及は多く合ったものの、こういった取引所に対する言及はあまり記憶にない気がしていますね。
結論から言うと、Uniswap Labsはもちろん今回のWells noticeに対して意義を申し立て、SECと戦っていく姿勢を全面的に見せています。また従来の不透明な金融システムを守り、便利になる、選択肢を広げる機会を妨げるようであれば、アメリカは消費者の選択と自由の促進という観点でイノベーションで世界に遅れを取ることになるとも話しています。ここからは発表の内容を意訳し、解説します。
ほとんどのトークンは証券であるとSECが主張しているにも関わらず、トークンはPDFやスプレッドシートといったデジタルファイルのフォーマットという定義に過ぎ、さまざまな価値を保存できる性質を持っているというまでです。
取引されるトークンのほとんどは証券ではなく、ステーブルコイン、コミュニティトークン、ユーティリティートークン、そしてEthereumやBitcoinのようなコモディティなどが挙げられます。これらの取引をUniswapを介して行ったとしても、投資契約には該当せず、もしこれらのトークンが有価証券に該当したとしてもSECが証券登録の道を自ら閉ざしているのが現状です。
まさにこの内容と同意見で、一概にすべてが有価証券ではないと断定はできませんが、一般的なほとんどのトークンは証券性がなく、トークンというフォーマットに記載された情報に過ぎないと考えています。またCoinbaseのStakingの件や、別件でSequoiaの記事にもあったように、トークンやその他のサービスに証券性が合ったとしてもSECに申請する方法が現状ないようですね。この主張は今回のUniswapの件以外でもいろんなところで話されています。加えて、ブログでは最後に明確な法律の解釈を今回の内容に当てはめて説明していますのでこちらにも触れておきます。
本問題を取り扱う権限を持たない
SECは法的に「投資契約」と分類される資産などを含む有価証券のみを管轄しています。先日の「SEC vs Ripple」の判決からも見て取れるように、デジタル資産の市場流通取引は、一般的に投資契約に当たらないを解釈されています。これはUniswap上で取引されるトークンにも適応できますね。有価証券に該当しないものをSECが取り締まるには、議会で新たにその旨の権限を付与する法律を先に可決させるべきで、現在のSECにはこれらのトークンを規制する権限を持っていません。
証券取引所やブローカーに該当しない
仮にRippleの件の進展や、Howeyテストによって万が一SEC側に主張が優位になったとしても、Uniswap Protocolや操作するためのアプリ、ウォレットなどは証券取引所やブローカーとしての法的な定義を満たさないでしょう。「SEC vs Coinbase」の一件でSECの「手数料を取るウォレットはブローカーだ」という主張は、すでに退けられており、この主張も厳しいものがあります。
証券は提供していない
Uniswap Protocolのガバナンストークンである「$UNI」は、投資契約の定義を満たさないものであり、証券の法的定義にも該当しないため、証券と位置づけることは難しいでしょう。Howeyテストのもとでは、投資契約とは、「他人の努力のみに依存した利益を期待する、共通の事業への金銭の投資」とされていますが、Uniswap Labsとトークンホルダーである30万以上のウォレット間で、契約も約束も交わしていません。また共通の事業は存在せず、トークンの価値がUniswap Labsの努力のみに依存しているわけではありません。
現在、証券の可能性があるとしてEthereum財団の調査を進めているSECですが、CFTC(商品先物取引委員会)は、BitcoinとEthereumのいずれもを証券ではないと明確に定義しています。Uniswap Protocol自身もBitcoinとEthereumと同様に十分な分散化が図られており、証券には該当していないといえます。
全体的に納得の内容なんですが、ちょっと思い当たる節がありまして、確かUniswapのガバナンスで先日、賛否両論がありながらも、Protocol Feeとして徴収している手数料を委任した$UNIホルダーに比例分配するみたいな決定があったんですよね。他の中堅DEXでは結構当たり前に取られている、DEXトークンのStakingと手数料の比例分配ですが、これが原因なんじゃないかなとちょっと思っています。
株っぽい、証券っぽい性質を持ってしまうのが、トークン保有、保有量に応じて報酬の分配、報酬が生み出されるポイントが一点というところなので、個人的には完全にSECが100%とんちんかんなことを言っているわけではないと思います。
一方で必要なイノベーションを阻害しているという主張にも納得で、どちらにせよここまで大きくなったオンチェーンエコシステムの中枢を司るUniswapの健全な存続が危ぶまれないような和解とSECの譲歩に期待しています。
さいごに
まあ今年も色々なことが起こりそうですね、やっぱりこうやって文字に起こすと理解度も上がるし、自分の理解が乏しい点もクリアになりますね。
そういえばいま、Zora上でこのUniswap LabsとSECの一悶着でUniswap Labsを支援するNFTが発行できます。別に一銭も入ってこないですが、こちらからmintできるので良ければ、、!自分は3つmintしましたが、もしSECに目をつけられても一切責任は取れません!笑笑