週間資金調達、、、この言葉を書くのももう約1年ぶりですね。なんかめちゃくちゃ懐かしい気持ちになっています。みなさんお久しぶりです。弊社の人気コンテンツの一つでもあった「週間資金調達」が復活します。
このニュースレターは基本的に私1人で書いているので、キャパを試すために試験的に毎日投稿+週1の週間資金調達って感じで当面は行きたいと思います。将来的には毎日2本投稿+週2本投稿の週16本にできればと考えております。
ご説明が遅れましたが「週間資金調達」って何?って方も多いと思います。当時よりも2倍以上のフォロワー数になったのでこれを機にまずは説明を。
「週間資金調達」はブロックチェーン業界の直近1週間であった「資金調達」の情報を日本語で毎週、プロジェクトの簡単な概要と独り言を添えて紹介するものです。以前からスタートアップやベンチャーキャピタルの方達にも多く読んでいただき、好評だったのでこの🐻マーケットでもきちんと発信するべきだと思い、再開する運びとなりました。ちなみに毎週「金」曜日の配信です。ぜひ無料なのでメールアドレスの登録を是非是非よろしくお願いします。
さてそれでは本題に入りましょう。8月18日から24日までに資金調達を発表したプロジェクト、企業数は12社。今週はBinance Labs出資銘柄が目立っていて、Game系は少なめでした。それではそれぞれの概要と資金調達の詳細を確認していきましょう。
friend.tech
friend.techとは「Share」という個々に紐づいたファントークンのようなものがみんなに発行され、所有することで発行者と話ができるSNSです。
Coinbaseの開発するL2、Baseでローンチされ、Baseの注目度上昇に合わせて急速に成長したプラットフォームの一つです。発行されたShareはいつでも売買なのでフォロワーの多いインフルエンサーのShareを中心にBOTが参戦し価格が高騰しています。
執筆時点(8月25日13時)では売買はユニークアドレス数は111,700、売買は200万txを超え、8月21日にはBaseのtx数の37%を占めるほどの人気でした(参考: dune.com)。
かなり大手のCrypto VCにしては攻めた投資をしたParadigmですが、どちらに転ぶのでしょうか。日本でもVALUやTimebankのような似たような仕組みがあったものの長期的な運営が難しかったので、このモデルでどこまで持続性が出せるのか引き続き注目したいと思います。でもすごいのはprotocol feeだからみんな見てみてね。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Seed
投資家: Paradigm
創業者: 0xRacer
公式X: @friendtech
公式サイト: https://www.friend.tech/
UXUY
UXUYとはMPC(Multi-Party Computation、マルチパーティー計算)ウォレットと統合したDEXを提供しているモバイルアプリです。取引の安全性を向上するために、SafeheronとGoplusの3社で共同開発しているのが特徴です。
bybit、bitget、okx然り独自のウォレットを開発したり買収したりしている中、同じレイヤーの取引所、MEXCから出資を受けました。厳密にはMEXCのインキュベーションおよび投資部門「MEXC Ventures」からの出資です。
CEXのような取引体験を目標に掲げ、gas代支払い用のnative tokenも必要なく、アグリゲーターを内包した取引プロセスでシームレスな取引を提供します。
ウォレット系の資金調達はマネタイズの難しさから少し下火になっていましたが、取引所系は依然として前向きな姿勢が見られますね。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Strategic
投資家: MEXC Ventures
創業者: 不明
公式X: @uxuycom
公式サイト: https://uxuy.com/
PADO Labs
PADO Labsの開発する「PADO」はオフチェーンデータを高いプライバシーで保護をした状態で検証できる信用証明書(CC、credit credentials)を発行できるプラットフォームです。例えばユーザーは個人情報を明らかにせずとも既存のゲームで成績が良かったことをGameFiプロジェクトに伝えることで、Airdropの対象者になるみたいななことが実現可能です。
他のオンチェーン証明発行系と異なる点は、MPC-TLS(Secure Multi-Party Computation on Transport Layer Security)やIZK (Interactive Zero-Knowledge Proofs)を使っている点。←については詳しくないので言及しません。
オフチェーントラストというよりも、複垢対策の一貫で「Gitcoin Passport」を筆頭にスタンダードが形成されている中、どのような活用方法を今後提示していくのかと、どこと組んでやっていくのかに注目です。どこから投資を受けたのかが非公開なのが気になりますが、Seedで300万ドルって日本だとまあない額なんでグローバルプロジェクトってすげえな心に染みますね。
調達額: 300万ドル
投資ラウンド: Seed
投資家: 非公開
創業者: Xiang Xie
公式X: @padolabs
公式サイト: https://www.padolabs.org/
Drip Labs
Drip Labsは「DRiP」というクリエイターが毎週サポーターに無料でNFTをギフトとして渡せるサービスです。現在ユーザー数が5,000万人を突破しており、2,500万以上のコレクションが既に配布されているとのこと。
耳馴染みのあるエンジェルとファンドが入っていたのでもっとサービスについて調べてみたかったのですが、docsやwhitepaperが見当たらなかったのでここまでの情報しかかけませんでした。
一つ興味深かったのは調達を報告するツイートに来た「But.... continuously giving out free stuff isn't a sustainable form of scaling a business. Thought VC's would know that. 」というリプに対して公式が「🤫」と送っていたことですかね。
調達額: 300万ドル
投資ラウンド: Seed
投資家: Placeholder、6th Man Ventures、Anagram Crypto、Collab+Currency、BOOGLE、B+J Studios、Big Brain Holdings、Interlace Ventures、Solana Ventures、Nalaji Srinivasan氏、Anatoly Yakovenko氏、Raj Gokal氏、Austin Federa氏、Mert Mumtaz氏、Bunjil氏、Nom氏、Tiffany Huang氏、Shake氏、ArbVision氏、Finn氏、Alex Gedevani氏、Asha Mungara氏
創業者: Vibhu Norby
X: @drip_haus
公式サイト: https://drip.haus/
Nodal Power
Nodal Powerとはゴミの埋立地から排出されるメタンガスを電力に変換し、再生可能エネルギーとして販売を目指すスタートアップです。しかも面白いのがこの電力を全て販売するわけではなく一部をBitcoinのマイニングに充てていく点。
二酸化炭素より温室効果が25倍高いメタンガスをどうするかは以前からの課題であり、この漏れ出したメタンガスを焼却しエネルギーに変えることで解決しようとしています。またマイニングは電力消費が問題になっており、再生可能エネルギーの利用促進が問われる中で非常に興味深い一手と言えるでしょう。普通に実現できれば一石三鳥ぐらいだと思うので頑張って欲しいですね。
本ラウンドの投資家は一応非公開みたいですが、公式XからフォローされているCH4 Capital、Satoshi Action Fund、Spacestation Investmentsあたりが投資家なのではないかなと。ちなみにCH4は資金調達のプレスリリースにコメントまでしてるので投資仮説はかなり濃厚。
調達額: 1,300万ドル
投資ラウンド: Seed
投資家: 非公開
創業者: Bryan Black、Matthew Jones、Daniel Sechrest
X: @NodalPower
公式サイト: https://www.nodalpower.com/
Moonbox
Moonboxとは生成AIを活用してDigitalを再構築し、芸術と映画を参考にした生成AI×NFTのアプリケーションを開発しているスタートアップです。
ホームページもまだちゃんと閲覧不可でdocs等も見つからなかったのでこれ以上のことはわかりませんでした。ちなみにBing VenturesとはMicrosoftのBingではなく、新興取引所「BingX」の投資部門のことです。正直BingXとの一致がファーストインプレッションじゃ難しいので一緒にしてほしいですね。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Strategic
投資家: Bing Ventures
創業者: 不明
X: 不明
公式サイト: https://moonbox.co/password
Maple Finance
Maple Financeとはオンチェーンでお金を貸したり、融資したりできるLending protocolです。オンチェーンで資本の透明性と自由性を高め、オフチェーンで金融機関レベルのデューデリジェンスを行うことで新しい資本市場を形成しています。
今年前半は🐻マーケットの煽りを受けて10Mを切りそうだったTVLも、現在60M弱へと大きく上昇しており、金利高からのRWA注目度合いが顕著にわかります。
さすがはMaple、投資家陣が錚々たる顔ぶれですね。今回の調達の目的はDeFiを超越してTradFiでも地位を確立していくこと。そしてthird-partyの審査機関がオンチェーンで融資及び事業の拡張ができるようにしていくことで、長期的にMapleをより持続的な運営にしていきます。競合にあたる「Goldfintch」との戦い方も気になります。
調達額: 500万ドル
投資ラウンド: Strategic
投資家: Blocktower Capital、Tioga Capital、Framework Ventures、Veris Ventures、GSR、Maven 11 Capital、Spartan Group、Cherry Ventures
創業者: Sidney Powell
公式サイト: https://maple.finance/
Delphinus Labs
Dlphinus LabsとはOpen SourceのzkWASM及びzkWASM Hubを開発するスタートアップです。今回の調達ではzkWASMの継続的な開発資金に充てられます。
あんまりここらへんも人並レベルしか知識がないので深いことは言えませんが、、、WASMはGoogleなどが開発した仮想マシンであり、広く言語をサポートしている実行環境です。Astar関連のニュースで聞いたことがある人も多そう?
Github → https://github.com/DelphinusLab/zkWasm
調達額: 非公開
投資ラウンド: 不明
投資家: Binance Labs
創業者: Sinka Gao
公式サイト: https://delphinuslab.com/
HungriGames
HungriGamesとは「Metahorse Unity」という5万フォロワーを超えるWeb3競馬ゲームを開発するゲーム開発スタートアップです。Sandboxの元クリエイティブ担当をチームに引き入れクオリティの高いゲームを開発しています。このゲーム、今月末にはmintが開始するみたいなので日本でも聞く機会が増えるかもしれません。
個人的にここに出してる投資家たちはあまり見ない人たちなのがちょっと気になります。特筆すべきことはなかったので、アップデートがあったり日本で話題になった場合は弊社メディアで取り上げたいと思います。
調達額: 190万ドル
投資ラウンド: Strategic
投資家: Boğaziçi Ventures、Sebastien Borget、Roko Finance、Preston labs、Triple Dragon、Erol Ozmandiraci氏、Oyunfor氏、Caglan Tanriverdi氏
創業者: Kagan Berk Kocak
公式サイト: https://www.hungrigames.com/
Pendle Finance
Pendle Financeとは元となるトークンを元本トークン(PT)と利回り部分(YT)に分離させ、🐮マーケットでの利回りの最大化と、🐻マーケットでの利回り低下に対するヘッジを実現しているyield derivative protocolです。
仕組み的にはTimeless Financeとかに近いのかなと思いました。Timelessと比較してBinanceが以前から推している気がしまして、Binanceにも7月頭に上場しましたしやっぱりUIのわかりやすさとタイミングって大事なんだなと感じました。
今月3件目?ですかね、CurveのOTC、Delphinus Labsに次ぐ3件目の出資です。取引所系CVCの中でも🐻マーケットで投資件数を落としていないのは強い資金力を感じますね。BNBが不調ですが次の🐮マーケットでもトレンドの中心にいてほしいです。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Strategic
投資家: Binance Labs
創業者: TN
X: @pendle_fi
公式サイト: https://www.pendle.finance/
Anytype
AnytypeとはDigital assetsの作成及び保存を安全に行うことを目標にしたLocal-firstのE2E encrypted softwareです。いまはタスクやメモ、アイデアの共有、ドキュメントの保管などを行うことができます。
ホームページを見た感じはNotionやCodaとかに似ているなぁと感じたので実際にあとで使ってみようと思います。
でもなんでAnytypeがこのリストにいるのかというと、Accountの管理がBIP-39ベースのシードフレーズで行われているから。docsの「Recovery Phrase」のページにもありますがウォレットみたいな画面が出てきています。これはおもしろいですよね。ブラウザ版はなくbeta版がMac、Linux、Windows、Android、iOSで配信されているのでぜひ皆さん使ってみてください(https://download.anytype.io/)。
調達額: 1,340万ドル
投資ラウンド: 不明
投資家: Balderton Capital、Inflection、Square One、Script Capital、Protocol Labs、Connect Ventures、New Forge、Foreword VC、Trent McConaghy氏、Jutta Steiner氏、Luis Cuendo氏、Adam Wiggins氏、Peter von Hardenberg氏、Markus Ament氏、LibermansCo氏
創業者: Zhanna Sharipova
X: @AnytypeLabs
公式サイト: https://anytype.io/
Lumina
LuminaとはMina protocol上でPermission型及びPermission-less型のハイブリッドなDEXを提供するDeFiプラットフォームです。ゼロ知識証明の活用により個人情報をお互いに開示する必要なく、検証された取引相手とのプライベートでTrustlessな取引を可能にします。
DeFi×KYC分野は「Blue」を始め注目している領域の一つなので、プレイヤーが増えているのは非常に嬉しいことです。
きたきたきたー!Jump Cryptoは個人的にCrypto VCの中でもポートフォリオの大好きさがTOP3に入るんですよね。Jumpが入ってたら問答無用で即調べます。あとしっかりMinaが後押ししているのも好印象ですね。
あとPaimaのエンジニアのSebastien Guillemotさんがバックエンドエンジニアとしてチームメンバーに入っていてびっくりしました。すごいですこの人本当に!
それに加え代表のEvan Kereiakes氏はCeloの主要なDEX「Ubeswap」のファウンダーでもあります。かなり強いチームですねこれは。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Strategic
投資家: Mina Foundation、Jump Crypto、Big Brain Holdings、O(1) Labs
創業者: Evan Kereiakes
X: @LuminaDEX
公式サイト: https://luminadex.com/
最後に独り言
今回の期間を見ていて軒並みシードラウンドの調達だったため、既に知名度のあるところでいうと「friend.tech」「Maple」ぐらいだったのでは?一方でその1~2週間前まで含んで見てみると「Coin98」「Helio」「Zetachain」「BitGO」「Ellipsis」などがあったのでこっちならかなり知っている方も多かったのではと思います。
やはり全体的に見てて思うのは、以前の🐮の時とは違ってシンプルなDeFi系や雑多なL1はかなり資金調達が難航している印象。一方で複雑なDeFiやよりインフラ層への長期的な目線での投資は増加しているように感じます。
かなりのプロジェクト数がこの🐻マーケットで淘汰されている気がしていますが、領域ごとの突出したプレイヤーの存在も薄いところが多々。初期の状態で乱立して幻滅期に入ると総じて忘れられているのが悲しいです。あとつくづく思うのが、1週間でこんな調達数じゃなかったはずなんですよね。去年の記憶よりも執筆にかかった時間が半分以下なのでその分いいプロジェクトのスクリーニングをしやすくはなったものの業界全体の活気を表す指標なのでこちらも悲しみが少し。
1週間ごとで切り取っても正直トレンド感などが分かりづらいと思うので、領域ごとに切り分けた推移をグラフにして四半期とかでレポート出せると読み手にとってもいいのではとかを考えておりました。これから「#毎週「金」曜日は週間資金調達」でやっていきますので忘れずにメールアドレス登録をお願いします!