こんにちは、今週も週間資金調達の時間がやってきました。あれこのタイトルって週刊でしたっけ週間でしたっけ、、?
そんなことはさておき暗号資産業界の「冬」を感じる出来事が最近増えてきましたね。資金が抜けて以前よりも小さなニュースに敏感に相場が反応する一方で、中期的に見ると取引量がかなり減少してきていて、横ばいなチャートを描いています。なんか冬はこれから更に本格化しそうな気がします。
先週の週間資金調達はこちら↓
8月25日から31日までに資金調達を発表したプロジェクト、企業数は13社(前回までの期間の集計漏れや発表時期のズレも含みます)。今週はラウンドが進んで追加調達をするケースが減っていますね。また13社のうちの2社がweb3マーケティング系のプロダクトです。それでは順番に見ていきましょう。
Cryptoworth
Cryptoworthとは会計士向けに設計された暗号資産会計サービスを提供しているスタートアップです。一般的な税金のほかに対応しているところが少ないDeFiやNFTの取引にも対応しており、リアルタイムの損益計算に加え、暗号資産スタートアップには嬉しい暗号資産支払い用の請求書管理も可能です。
主要な顧客にAAVE、Axie Infinity、Moonbeam、Huobi、PWC、Stacks、Request、Pumapay、Gate.io、POLYMATH、everstack、Celo、Solana、GrantThorntonといった一流の暗号資産関連企業、DeFi protocol、スタートアップを含みます。
ブロックチェーン領域に参入する時の障壁の一つに会計や税金の管理って話を大企業やクライアントから私たちもよく聞くので、こういったサービスが増えてくれるのは嬉しい一方で明確な差別化が困難になってきているので、おそらく今後は極端な価格競争もしくは営業強いところが残るか、税理士や専門家も一緒にセットでサポートして単価を上げていく方向になると思いますね。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Strategic
投資家: CMT Digital、Kyber Network、Saison Capital、ODA Capital、Polygon
創業者: Jay Geeth
公式X: @CryptoworthApp
公式サイト: https://cryptoworth.io/
Raleon
Raleonとはゲームやブランド向けにweb3マーケティングを簡単に始められるツールや機能を提供しているスタートアップです。従来のタスク型プラットフォームとは異なり、よりターゲットを絞ったアプローチを実現可能にしています。
例えば自身のサイトに埋込可能なクエストの作成や、ターゲット指定を行ったアプリ内のメッセージング機能、アナリティクス部分も競合と比較しながら実際に効果があったのかの測定やオンチェーン分析にも対応しています。
またユーザーのプライバシーにも配慮しており、Cookieを利用せずその他のIPアドレスなどを取得していないのも特徴です。意外とCookie同意のポップアップで離脱しているケースもあると思うので事業者にとってもいいかもです。
調達額: 380万ドル
投資ラウンド: Strategic
投資家: Blockchange Ventures、Play Ventures、Alliance DAO、Portal Ventures
創業者: Nathan Snell
公式X: @RaleonHQ
公式サイト: https://raleon.io/
BitOasis
BitOasisとは中東や北アフリカ地域で高いシェア率を誇るCEXです。調達した資金を活かして新たな顧客の獲得や更なるマネタイズを行うとともに、他地域でのライセンス取得による提供地域の拡大を行う予定です。
リード投資家としてCoinDCXが、フォローでWamda CapitalとJump Capitalが出資を行っています。前回のラウンドからの継続出資はWamda Capital、Jump Capitalの2社でそういえば前回のシリーズCではいまはなきAlamedaが出していました。
CoinDCXは以前からOrdinarly Network、Space and Time、Unstoppable Domains、Liminal、metaENGINEにリード、フォロー含め出資を行っている一方で、BitOasisの所在するMENA地域への初めての出資案件になったみたいです。
また今回のラウンドについては言及していませんでしたが、ひとつ前の調達ニュースが3,000万ドルでシリーズCだったことを考えると、4~5億ドルあたりで並行したバリュエーションでの調達かなと。かなりCEXビジネスもListing取ってこれないと厳しいってところが多いので調達や合併、縮小は国内外で今後さらに加速しますね。
あとなんかdubaiの誰かが「こっちではBinanceかBitOasisしか使ってないよ」とか言ってた気がしますが、真偽は不明です(知ってる方いたら教えてください)。ちなみに直近7月の月間アクセスは4.6万だったのでまあまあよくわかんないです。
調達額: 非公開
投資ラウンド: 不明
投資家: Blockchange Ventures、Play Ventures、Alliance DAO、Portal Ventures
創業者: Ola Doudin
公式X: @bitoasis
公式サイト: https://bitoasis.net/
FirstMate
FirstMateとはノーコードでブランドやクリエイター毎にカスタマイズしたマーケットプレイスを作成可能にするツールを提供しているスタートアップです。Opensea、LooksRare、x2y2、Foundationなど複数のマーケットプレイスのアグリゲーター的機能も備えており、カスタマイズしたGemやGenieのような使い方ができます。
見た感じはRaribleが提供しているノーコードマケプレ構築サービス「Rarible API」と似た感じかなと思いました。
9dcc、sound.xyz、Bankless、FELT Zineとパートナーシップを締結しているとのことでこれからのコラボレーションにも期待ですね。
調達額: 375万ドル
投資ラウンド: 不明
投資家: Dragonfly Capital、Coinbase Ventures、Nextview Ventures
創業者:
公式X: @usefirstmatexyz
公式サイト: https://www.firstmate.xyz/
Builder DAO
Builder DAOとはweb3プロジェクトのインキュベート、教育、リサーチを提供しているDAO主導のプロジェクトです。現在12のプロジェクトをインキュベーション中で面白いプロジェクトがたくさんありましたので記載しておきます。
Vitae3、Nextme、FutureX、SourceDAO、MetaShield、iSnoopy、MetaTraining、Pix Space、Ubiloan、Furion、Dorse、HooH
海外は比較的ハッカソン後に継続して開発いるものやプロジェクト化するものが多く見受けられますが、国内のハッカソンを見る限りその場のプロダクトが多くあるように思うので、運営がサポートするとともにこういったグローバルマーケットに精通している人が中にいるインキュベーションプログラムが増えると嬉しいです。
調達額: 200万ドル
投資ラウンド: 不明
投資家: Sequoia China、SevenX Ventures、Bing Ventures、DRK Lab、M77 Ventures、Gate Labs、Mirror World、Conflux、Vitalbridge Capital、Inverse Ventures、Doc Labs、Nicholas Hu氏
創業者: なし
公式X: @BuidlerDAO
公式サイト: https://buidlerdao.xyz/
ProsperEx
ProsperExとはDeFiのセキュリティとRWA、そこにAIをかけあわせたDEXです。ユーザー体験を最大に考えた設計を行っているそう。
実際にプラットフォームを見に行ってみたんですが、大手CEXと似たインターフェースで取引量もBTCUSDTで1B手前ぐらいあったので同期間のdYdXを3倍ほど上回っています。現物の取引量は新興CEXぐらいでしたが悪くなさそう。
現在の対応チェーンはBSCとPolygonです。またホームページを見る限り、主要暗号資産ペアの他に為替、株式、コモディティの取引にも対応するみたい。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Strategic
投資家: EMURGO
創業者: 不明
公式X: @prosper_ex
公式サイト: https://www.prosperex.xyz/
Campaign
CampaignとはECを利用するクリエイター及びブランドの顧客エンゲージメントを高めるために、ブロックチェーンを活用した施策をノーコードで実施できるプラットフォームです。オンラインとオフラインのいずれもを活用したマーケティングからパーソナライズされた特典の付与など様々な機能を搭載しています。
相場の停滞や規制感の不透明さから業界が冷え込んでいるように見える一方で、事業者の参入や興味関心の角度は衰えておらず、直近の「Base × Coca-Cola」の事例を見てもそれは顕著でしょう。その観点からこういったエンプラ向けのノーコードプラットフォームは営業力勝負ですが需要はあるように感じます。
今回のラウンドで出資を行ったのはLloyd Leeさんが代表の「HYPERITHM」で、ここは日本と韓国で機関投資家向けの暗号資産管理事業を行っており、韓国では暗号資産交換業の該当するライセンスを保有。去年の3月にそういえばCoinbase Venturesから出資を受けていたり、6月にはWeb3ファンドの設立発表もありました。
スタートアップ投資と、機関投資家のマーケットとのブリッジ役という2つの側面からエコシステム発展に貢献していくクリプト業界の必要なプレイヤーです。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Pre-Seed
投資家: HYPERITHM
創業者: 不明
公式X: @CampaignLayer
Lyvely
Lyvelyはフリーランスおよび自営業を営むクリエイターのコンテンツの収益化をサポートするサービスを提供しているアラブ拠点のスタートアップです。トークンを発行し有料のSNSを構築しマネタイズを行えるようにする予定らしい。
既存のアプリユーザーに抵抗感のないweb2-likeな設計にする予定で、多くのユーザーをweb3へ引き込むことを目標にしているとのこと。公式サイトの情報量も少なく、Xも見つからなかったので紹介できる情報は以上です。
調達額: 非公開
投資ラウンド: Seed
投資家: Cypher Capital
創業者: Farah Zafar
公式X: 不明
公式サイト: https://lyvely.com/
GPU.Net
GPU.NetではGenerative AI、LLM、3Dレンダリング、web3領域などの新領域へ参入する企業を支援するための計算リソースを確保するために、分散したGPUネットワークを構築し提供しています。完全準同型暗号(FHE)を用いてリソース提供者が計算内容にアクセスすることなく、プライバシーが保護された環境で計算リソースの利用を可能に。
資金調達のリリースと同時にNvidia、Taanga Studiosとのパートナーシップも発表し、同社の支援を受けながら今月ローンチ予定のtestnetに向け準備を進めています。
Cryptoプロジェクトの分散GPU系だと「Render」が競合になるんですかね。調達額もグローバルプロジェクトにしてはかなり小さく、100万ドルを切っているので今回の調達資金でどこまでグロースさせられるのか気になる一方で、トークン発行して追加で資金調達をする説もあるので引き続き追っておきます。
調達額: 50万ドル
投資ラウンド: 不明
投資家: Momentum 6、Alphablockz
創業者: Suraj Chawla
公式X: @gpunet
公式サイト: https://gpu.net/
IronMill
IronMillとはゼロ知識証明を活用したアプリケーションの立ち上げを支援するインフラ系のスタートアップです。「誰でも検証可能なインターネット」を目標に同社では現在「Oxide」というプロジェクトを立ち上げて開発を行っています。
創業者であるGreenblatt氏は、スタンフォード大学で電気工学の博士号を取得しているほか、複数の特許を持ち、過去に本の出版も行っています。機械学習に関する多彩な経歴の持ち主であり、起業家としても活動しています。
日本のGumiの投資部門であるgumi Cryptos Capital(gCC)をリード投資家とし、その他複数の投資家が参加。なんかGumi案件久しぶりな気がします。
調達額: 260万ドル
投資ラウンド: Pre-Seed
投資家: gumi Cryptos Capital、Blockchain Builders Fund、Superscrypt、LongHash、Kestrel 0x1、SevenX
創業者: Greenblatt
公式X: @ironmill_xyz
公式サイト: https://www.ironmill.xyz/
DeForm
オンチェーンアクティビティからなるオンチェーンデータを活用してマーケティングを行うCRMを開発しているスタートアップです。デジタルマーケがオンラインからオンチェーンに移行する未来を見据えて、より効果的なエンゲージメント追跡、インセンティブ設計の構築を提供しています。
その中でもオンチェーンのワークフローとの統合、顧客データにしたがってオンチェーンデータとAIを活用したデータ処理、デジタルコレクティブルとトークンの配布などに長けているのが特徴です。
今回のラウンドではKindred Venturesがリード投資家として参加し、Elad Gil、Scalar Capital、A.Capital Ventures、Next Web Capital、Alchemyがフォローで、エンジェル投資家としてNaval Ravikan氏、Marc Bhargava氏、Nader Dabit氏、Sep Kamvar氏、Scott Belsky氏、Patrick Collins氏、Charley Ma氏、Albert Hu氏、Sina Habibian氏が参加しました。
そういえば今朝「Farcaster」の招待なしwaitlistのQRを見たんですが、たしかこのDeformが使われていて早速広がりを感じています。一方でこういったマーケティングツールの主な利用者がweb3プロジェクトに偏る傾向にあるので、既存のweb2企業へのアプローチには注目しています。
加えて今週だけでもweb3マーケティング系が3件あるようにかなり飽和した市場になってきています。オンチェーンデータの抽出は誰でもできるからこそ分析の角度や機能面でいかに優位性を作るかがポイントです。個人的にweb2企業が参入する時のフックは、web3企業やNFT-IPとのコラボを希望してることが肌感で多いので、そこら辺の繋がりを強調しているプロダクトに一定の伸びしろがあるように感じています。
調達額: 460万ドル
投資ラウンド: Seed
投資家: Kindred Ventures、Elad Gil、Scalar Capital、A.Capital Ventures、Next Web Capital、Alchemy、Naval Ravikan氏、Marc Bhargava氏、Nader Dabit氏、Sep Kamvar氏、Scott Belsky氏、Patrick Collins氏、Charley Ma氏、Albert Hu氏、Sina Habibian氏
創業者: Catherine Chang
公式X: @deformapp
公式サイト: https://www.deform.cc/
Stroom Network
Stroom NetworkとはBitcoinのLightning Network(LN)にLiquid Staking Pratformを提供するウクライナ拠点のスタートアップです。LNにBTCをdepositすることでroutingの手数料を得ながら、ERC-20の「lnBTC」が1:1で発行されるのでEthereum上で担保として別の資産を借りたりして資本効率を上げることができます。
創業者のRostyslav Shvets氏はBitfuryやLidoで以前働いていたこともあり、ブロックチェーン業界にもLiquid Stakingにも詳しい人物です。
このラウンドではGreenfieldが主導し、Lemniscap、No Limit Holdings、Cogitent Ventures、Mission Streetが参加しました。
調達額: 350万ドル
投資ラウンド: Seed
投資家: GreenfieldLemniscap、No Limit Holdings、Cogitent Ventures、Mission Street(Ankr)
創業者: Rostyslav Shvets
公式X: @StroomNetwork
公式サイト: https://stroom.network/
Coral Finance
Coral Financeとはレバレッジを掛けた利回りを享受できるNautilus Chain上で初めてのデリバティブ取引プラットフォームです。
多くのDeFiが初期の流動性を集める時に高い利回りを提示している持続性のない現状を変えるためにトークンローンチ前にpremium poolを作成できるようにし、トークンの価格下落を緩やかにするともにユーザーに投機的な取引の機会を提供します。
ユーザーは流動性を追加することでcTokenが発行され、cTokenを原資産にした新たな市場を作成可能です。既存のveTokenの資本効率を向上させるためにPIMという時間の経過とともにAPYが現象する仕組みを提案しました。ユーザーが継続的に流動性を追加するモチベーションをここから生み出しています。
ちょっと情報を読むだけじゃあんまり分からなかったので、実際にこの後触ってみようと思います。面白かったら別途ニュースレターで書きます。
調達額: 50万ドル
投資ラウンド: 不明
投資家: Momentum Capital
創業者: 不明
公式X: @Coral_Finance
さいごに
今週も週間資金調達を見ていただきありがとうございました。話題になってからプロダクトを追うのもありですが、資金調達の時点で存在を知っておけると業界のトレンドを掴みやすくなるかもしれません。
もうひとつここだけの話でおすすめなのは、資金調達よりも前からプロダクトの存在を知る方法として「ETH Global系のハッカソンのファイナリストを調べる」というもの。かなり有用なので皆さんやってみてください。このニュースレターでも臨時配信でやってもありですね。
それではまた来週の週間資金調達で会いましょう。