みなさんステーブルコイン市場でいま少し変わった現象が起きていることを知っていますか?それはステーブルコインが軒並みdepegしているということ、そしてある一つのステーブルコインだけの価格が上乖離しているということ。要するにとあるステーブルコインとそれ以外での需要に歪みが発生しているということです。
みなさんはどのステーブルコインの需要が高まってると思いますか?私の独り言を読んでくれている方達で勘の良い方はわかるかもしれません。そう、それは先日紹介したDSR(sDAI)を提供し始めた「DAI」なんです。
どこのどんなステーブルコインよりリスクが低く高い利回りを提示したため、かなりの勢いで他のステーブルコインからDAIへスワップされ、sDAIへの変換が起こっています。DSRについてはこちらの独り言からおさらいできます。
今回はそんなDSRによるステーブルコイン市場の歪みと、その歪みを戻そうと取り組みを行うプロジェクト、そして周辺のステーブルコイン勢力構造の変化について解説してまとめました。
DSR(sDAI)の成果
DSRの利回りを8%に向上させてからDAIの発行枚数が大幅に増加し、sDAIへの変換が次々と起こっていることは前回説明しましたが、あれから一体どこまで発行額を伸ばすことに成功したのでしょうか?
まずは発行量から見てみます。8月6日0時時点では4.44Bでしたがピーク時で5.36B、そして現在は5.34Bを推移しています。増加率は10日で+20.3%です。5B以上発行されている主要なステーブルコインではなかなか見ない伸びですよね。すごすぎます。
次にsDAIのロック量を見てみましょう。こちらもすごい増え方をしていますね、前回のDSRに関する記事を書いたときは1Bに到達していませんでしたが、1Bを大きく上回り、1.35B DAIがすでにロックされています。
この数字だけ見ると輝かしい成功に見えますが、周辺のステーブルコインエコシステムを大きく破壊する要因にもなってしまっています。
depegするステーブルコイン
上で発行増加量とsDAIの量が不釣り合いなのは確認しましたが、発行増加量を上回る量がsDAIになったということは市場にあるDAIからの流入があったということなんですよね。ここで元々DAIを持っていた人がsDAIにするのであれば何ら問題なかったですが、USDTやUSDCなどといった他のステーブルコインをDEXでスワップしてDAIを手に入れようとした人が多くいたがために価格の下乖離を起こしています。
またここまで大きな保有インセンティブのあるステーブルコインがでてくると、まだ発行量の乏しいステーブルコインは流動性が不足しかなりの影響を受けてしまいますよね。実際にこの一連の流れを受けて動き出したプロジェクトがあります。
Raftの$R
動き出したのは「Raft」というプロジェクトです。まだまだ30Mほどの発行量なので知らない方も多いかもしれませんが、Raftは最低で120%の担保率、金利0%のステーブルコイン$Rが発行できるprotocolです。しかし発行インセンティブの無さと発行量の少なさから多くがDAIへとスワップされ、0.99ドルを下回るdepegの最中です。
そこでRaftのコミュニティはRのdepegを解消するためにproposalを出しました。その内容は下記にまとめています(本文をかなり意訳)。
source: [Proposal] Single-Sided Dai Liquidity Incentives to Restore R Peg to $1
proposal提案時点でRとbb-s-DAI(本文にはbb-a-DAIとあるがおそらくbalancerのpoolを指しているのでいま流動性があるのはbb-s-DAI)の比率が7:3とかなりRが多い状態なので、Rの価格は0.99ドル前後を推移しています。
ここで注目すべきはsDAIの利回り高によって、分散型ステーブルコインの中でもRを含むLUSD、GRAI、GHOなどのような金利が0もしくは低いものは軒並みdepegしているということ。我々が計画しているsDAIを軸とするPeg Stability Module(PSM)は中長期的には結果が見られるものの、短期的なdepegを効率的に解消するためには不向きです。この提案ではR/Dai Boosted poolで片側流動性供給を促進させ、安定性を向上させることでRの有用性を高めることを目標とします。
まずDAIをR/Dai Boosted poolに片側流動性供給することにインセンティブを付与することを提案します。当該poolにDAIが増加することで、poolにrebalanceが起こるのでRの価格上昇が予測できます。また片側流動性供給を行う人たちにはsDAIで保有するよりも高い利回りを提供することで流動性向上を促進します。
Swap時の取引手数料
$BALのインセンティブ
$AURAのインセンティブ
sDAIの利回り
上記のインセンティブを提供することで、最大で10-20%のAPRを実現し、500-1000万ドルのDAIのpoolへの純流入を目指します。
同時にRの借り入れ手数料(金利は0%だが借り入れるときに手数料が0.5%かかる仕様になっている)を1%に引き上げ、Amp factorを125(現在R/DAIは125でR/bb-s-DAIは120になっている)から250へ増加させたいです。これらのメリットとして下記のようなものが挙げられます。
depegの解消: バランスの取れた流動性poolにすることで、準備金の必要性を大きく下げることができステーブルコインとして健全な状態になる。
utilityの向上: 片側流動性供給でsDAIが使えることを広めていくことで、Rの認知度拡大とpegの強度を向上させることができる。
arbitrageの促進: pegが強いステーブルコインは価格が上乖離した時にshort positionを持つメリットがあるので、Rの価格が上昇した時の暗黙の手数料が実質撤廃できる。
Rの流動性poolの歪みを解消するためには、このような戦略的で積極的な施策を必要としています。pegの強度を高めるためのインセンティブを提供することで、Rの魅力を最大限にでき、長期的なRの成長に貢献できることを目指します。もしみなさんからの合意が得られたらすぐにでもこの施策は実施できます。
このようにpoolのバランスを修正するために、Rじゃない側の片側流動性供給を促進させようということですね。でも気になったのは、Blancerのstable poolって3:7ぐらいでこんなに歪むんですね。たしかCurveのstable poolのほうが良さそうですよね、ちょっとRaftについて疎いので調べてみて明日の「昨日の話の続き」のところで補足をまとめようかと思います(現在23時、やばい毎日投稿が危うい!)。
ステーブルコインの勢力構造
最近全体的にステーブルコインに対する意識が最近上がってきているように感じましてね、DAOでの脱USDTは前から一定数あったものの、脱USDCも最近進んでいる気がしまして、、、Michael Egorov㌠の負債が残る「Silo」大先生が、Treasuryにある1M USDCをLUSDにスワップするproposalが通って晴れて(?)一部脱USDCが完了しました。
にしてもUSDCの発行量減りすぎですね。
直近1年のUSDCの発行量の推移です。えっぐい量減ってますよね。DAIの増加量がかなりかわいく見えるほど。ちょうど一年前の2022年8月16日時点で53.46B、今日の2023年8月15日を見ると25.97Bなので半分以下になってます、、、
まあすぐに潰れるなんてことは無いとは思いますが、8BでSPAC上場!って言ってたCircleサンにとってはかなり向かい風な状況なことは間違いないでしょう。
でもこんなにUSDCの発行量が減っているということは、、、USDTが増えているんでしょうか。見に行ってみましょう。
USDCと同じ直近一年の推移です。かなりUSDTの発行量が増えていますね、USDCのこの一年の減少量が27.49BでUSDTの増加量が15.72BなのでまあまあUSDCからUSDTにお金が流れてそうな気がしますね。ちなみにここ数ヶ月で去年の5月あたりにピークを迎えていた発行量の最高記録は全然塗り替えています。
やっぱりステーブルコインの王はUSDTなんでしょうか、発行からいままでで見てもこのベアマーケットでも堅調に発行枚数を伸ばせていることから、かなり強者感がありますね。余談ですが自分はUSDCで持っている量がいちばんおおいです。
さいごに
今日はステーブルコインの話を盛り盛りで話しましたが、いかがでしたでしょうか。ステーブルコイン好きとして追ってる領域のひとつなので、定期的に何かあれば情報をまとめていきたいところです。
さあ来週あたりから実は発信したいコンテンツがありまして、先週からこっそり準備をしてたんですよね、、!もう少し内容を難しくしてもいいかなと思っているので、ちょっと尖った内容も投稿していきます。「週間資金調達」ももうすぐで再開するのでまだメールアドレスの登録が終わっていない方は、ぜひ下のところからよろしくお願いします。