そういえば昨日の午前中、MakerDAOのRune大先生が来日して日本でイベントを開いていました。内容はMakerのSubDAOである「Spark」に次ぐ第2のSubDAOを日本コミュニティ起点で立ち上げようというもの。
大手のprotocolを中心にgovernanceの分散を目的にした「SubDAO」の構築へ支援が進む中、日本に目を付けてくれるのは嬉しい一方で「なんで日本?」って感じはちょっとありますがせっかくなので今日は、Makerで投稿されたSparkに関するproposalを含むここ最近のproposal一緒に見ていきましょう。
はじめに
最初にざっくりSparkのなんの提案かっていうと、SubDAOであるSpark protocolでトークンローンチ前から事前にfarmingをできるようにしようってもの。Lending系を代表に新興チェーンのDEXは結構やりがちなこの手法。
でも実は長期的なロードマップの一つであって、これの元はと言うとまたまたこれもRuneの5月に投稿した「The 5 phases of Endgame」のロードマップに由来します。
では本文を解説していきながら順番に見てみるとしましょう。
The Endgame
DeFi業界の中で確固たる地位を確立しつつある「Maker」が「Endgame」と名付けエコシステム内で新たなブランディングを構築するために動き始めました。大きく分けて下記の5つのことを2024年からスタートさせるとのこと。
MakerとDaiをリブランディング
SubDAOの始動
ガバナンスにAIを導入
ガバナンスへの参加インセンティブ設計
独自チェーンの立ち上げ
実際このproposalが立ち上がったのは2023年5月11日のことで、そこからいろいろ情報が出てきていますが、それぞれを順番にやっているってよりかは並行して全体的に推し進めているように感じます。
MakerとDaiをリブランディング
最近2019年以前のプロジェクトがリブランディングするのが多くなってきましたね。PolygonもAAVEも時代に合わせたデザインのロゴやtickerに変化しています。
MKRとDAIを新しい名前へと変更
1:12000の比率でMKRを株式転換的に変換
新しいMKRの1億トークンをfarming報酬として提供
DAIの流動性を増やす施策を多方面に展開
米国居住者IPとVPN利用ユーザーはすべてアクセスをブロックへ
SubDAOの始動
冒頭で触れたようにSubDAOの立ち上げも増えています。自分の近いところでもdYdXがDAOへの移行を進めSubDAOの発足を支援する動きが進んでいます。
日々の複雑なDAOの議論を6つのSubDAOに一部委任
独自のガバナンスプロセスで専門的な議論を並行し意思決定を速くする
意思決定部分はFacilitatorDAOとAllocatorDAOが担当
FacilitatorDAOは2つ立ち上げ、ガバナンスプロセスの管理に特化
それぞれのDAOが毎年5,000万(4166MKR相当、総供給量の約0.42%)の新しいガバナンストークンを報酬として受け取る
AllocatorDAOは4つ立ち上げ、担保資産の運用効率の処理などに特化
それぞれのDAOが毎年4,000万(3333MKR相当、総供給量の約0.33%)の新しいガバナンストークンを報酬として受け取る
それぞれのDAOでトークンを発行する予定とのこと
ガバナンスにAIを導入
ガバナンスの更なる分散化と意思決定の高速化はDAOの課題となっていますが、ここにMakerDAOはAIを活用する判断を下しました。
ガバナンスのベースルールとなるのはMIP-101で策定された「Atlas」
AIがAtlasを継続的に改良していきリーダー的権限への依存を排除
Aligned Voter Committee(AVC)を強化する役割を担う
Purpose FundによるOSSのAIモデルや無料AIツールに資金支援
ガバナンスへの参加インセンティブ設計
ガバナンス周りのエコシステムがAIの活用を通じてDAOの管理を円滑に行えるようになった後にSagittarius Lockstake Engine(SLE)を開始します。SLEとは新しいガバナンストークンをロックしてAVCのガバナンス戦略に投票権を委任することでインセンティブが発生する仕組みです。
ゲームっぽい見た目で操作可能なfrontendを提供
最近どこかもやってて今後の流行りになりそう、しっかりインセンティブを与えて習慣化することで投票率の底上げにも繋がりそう
ガバナンスへの参加報酬としてprotocol feeの30%もしくはSubDAOトークンを
SLEではロック解除をすると15%がburnされる仕組み
SubDAOトークン用の6つのfarmも立ち上げ予定
毎年4,000万(3333MKR相当、総供給量の約0.33%)の新しいガバナンストークンをfarming報酬として割り当て
独自チェーンの立ち上げ
SLEが始動してからの最終段階はMaker独自チェーンの立ち上げです。当該proposalには載っていませんでしたが、先日Rune氏が9月1日のproposalでSolana forkを採用したいといっていたのでそうなるかもしれません。またCosmosも候補とのこと。
SubDAOトークンのトークノミクス、安定したガバナンス運営のためのバックロジックをすべて集約したチェーンになる
チェーンごと分離することでユーザー体験を設計しやすくなる上に資産保護の観点から長けているとのこと
ガス代の支払い(ネイティブトークン)にSavingした新しいステーブルコインを採用、いまでいうDAIのsDAIみたいな感じ
これ個人的にめっちゃ面白いと感じたポイントですね
コンセンサスステーキングには新しいガバナンストークンを使用
決してSolanaにすべての基盤を移行するということではない
SparkDAOのエアドロ
SparkDAOはMakerの一つ目のSubDAOであり、DAIをロックしsDAIにすることでDSRの利回り(当時は8%)を享受できることで1Bを余裕で超えるTVLをDeFi最速レベルで集めることに成功しました。
現在は多数のsDAIが集まったことにより8%から5%にDSRが下げられており、それに伴うDAI離れを防ぐためにいくつかの施策が練られています。その内のいちばんの施策がSubDAOトークンの「エアドロ」です。
そのトークン配布方法は一般的なLending protocolの報酬分配と同じborrowerにインセンティブを付けるというもの。借り手の需要を上昇させることで貸し手の利回りも向上するのでこの方法は短期的にTVLを増加させるには有用です。この内容に関してもRuneがproposalを出していたので要約しました。
リンディ効果(Lindy effect)的にSparkの信頼を高めていくために、多くの資産の流入を加速させたい
SparkDAOの未来と可能性に共感してくれるユーザーとDAO参加者たちの間でコミュニティを形成したい
いまのフェーズを「prefarming期間」としSpark protocolで借り入れを行ったトークン量をベースに今後SubDAOトークントーンチ時にエアドロを行うというもの。
実際のトークン放出量は割合などに入念な時間をかける予定だそうですが、そもそもこのエアドロ自体で一攫千金といったAPYになるわけではなく、現実的なラインでいうとAPYは1桁台というところとのこと。
さいごに
他のCDP系ステーブルコインとは比べて欠点がある一方で、確固たる信頼と安心感というブランディング、斬新な施策を売りにここまで知名度を伸ばしてきたMakerですが、ここに来てまた斬新な施策をぶっこんできたなあって感じですよね。
Solana系に進出するって見たときは「まじ?」ってなりましたし、SubDAOに関しても日本を中心に作るって聞いたときは「なんで?」って思いましたね。
そしてこれらのSubDAOトークンの需要はMakerDAOからの報酬トークン捻出などで成り立たせるそうですが、ここまで本体がSubDAOに関与してトークンをそれぞれで発行している前例はおそらくないのでそれぞれのトークノミクスがどうMakerDAO全体のエコシステムに影響を与えるのかは今後もニュースレターでまとめていきます。
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