世界中で日に日に増えている暗号資産を取り扱う企業とDAO、そこで働く人たちの給与支払いの実情はどうなっているのでしょうか?
外野からはCryptoで給与が貰えたら嬉しい!なんてことをいう方も多いですが、実際生活をしようとするとまだまだFiat(法定通貨)が必要ですよね。
そんなCrypto企業とそこで働く人たちのための給与管理サービス「Utopia」について今日はお話しようと思います。日本での利用はまだまだ先かもしれませんがこういった海外での需要を観測することは新たな事業アイデアに繋がるかも。まだ昨日の夜のニュースレターもまだの方はこちらも読んでいただけると嬉しいです↓
暗号資産関連の取引や企業の会計や税金計算のサービスはかなりの量が世の中に存在していますが、Utopiaの強みはFiatへの「Off-ramp」にあります。例えばEthereumで受け取った売上を米ドルにして銀行口座に振り込みたい場合、従来であればどのようなフローを踏む必要があるでしょうか?
ETHを中央集権的な取引所へ送付
ETHをUSDへ交換
USDを会社の法人口座に出金
法人口座から従業員の個人口座へ送付
仮に時間がそんなにかからなかったとしてもめちゃくちゃめんどくさいですよね、このフローを取っ払えるのが「Utopia」なんです。
Utopiaとは
UtopiaとはCrypto企業とDAO向けのFiatとCryptoのやり取り(On-ramp、Off-ramp)を簡単にするサービスを提供している会社です。最近ではすべての国の事業者を対象に米国の銀行口座を持っている従業員へUSDCを利用した等価(1:1)のOff-rampが利用できるようになったことで一部で話題になっていました。
従来の方法でUSDTやUSDCをMoonpayなどのOn/Off-rampサービスでFiat化するとかなり高い手数料を取られてしまいますし、取引所で換金してから送るのもかなり面倒ですよね。また米ドルステーブルコインを償還することもできなくはないですが、企業がアメリカで銀行口座を保つ必要があったり、なんせ10万ドルからしか対応していないので少人数のスタートアップにとっては難しいケースもあるかと思います。
そこを解決したのがまさにUtopiaで、USDTやUSDCを始めとするステーブルコインを筆頭にさまざまなトークンで給料を支払いうことができ、肝心の従業員はFiatで受け取れる仕組みを提供しています。裏側にはアグリゲーターが搭載されていて、ベストレートでスワップして振込を実行します(しかも3日で届くらしい)。
また入出金の管理もすべてUtopiaで完結させられます。ウォレット単位でまとめて表示したり、入出金の全体図をグラフで表示してくれたり、あとはCSVで出力できるので他に会計ソフトなどを使っていたらデータの共有もかなり楽です。
まあ見るからに便利なのでUniSwap、dYdX、Galxe、Gitcoin、Badger、Olympus、Treasure、Yearn、SushiSwap、VitaDAO、Paragons DAOなどの有名プロジェクトがこぞって活用してます。
しかも資金調達もかなり一流のところからしていて、直近のシリーズAラウンドではParadigmが主導し、Circle Ventures、Gusto、Coinbase Ventures、Infinity Ventures Crypto(IVC)、Distributed Global、Fourth Revolution Capital、Kindred Venturesが参加しました。ほんとに需要あるプロダクトなので納得の顔ぶれです。
企業向けサービスへの所感
Utopiaが大好きなのでこの話題から入りましたが、話したかったことはもう一つあります。冒頭で事業アイデアの参考になればと言ったように、現在スタートアップ、大企業の新規事業部を含めtoCよりもtoB事業にシフトしている傾向にあります。弊社も主な収益源は企業向けの支援なのでこの現実はめちゃくちゃ理解しています。
日本に拠点を置いて提供できるCrypto関連の事業はかなり限られていて、日本発でグローバルに事業展開できている事業者の母体はすべて日本国外にありますよね。みんなtoCサービスを提供したいのは山々ではあるが撤退が続いているのが実情。私たちもtoCサービスに関して社内での議論は進めてきましたが、タイミング的にも市場規模的にも日本でやるには正直厳しいのが現状です。
一方で法人向けの事業を切り取って見た場合、国内の事業者がかなり覇権を取っていますよね。なぜなら言語的な優位性や人脈を活かした立ち回りをし易いから。海外でもサービス終了が相次ぐ中、事業展開の方針転換は賢明な判断な気もしますがその提供先の企業が結局toCの施策をやっていくことになるでしょうに、対象としている市場自体の大きな変化は起こっていません。
では国内のWeb3と呼ばれるエコシステムや市場全体を大きくしていくためにはどのようなアプローチが有用なのでしょうか。結論から言うと上のような構造が続く場合は、既に顧客を持つサービスを提供している企業の積極的な誘致が必要です。
単にコアファンのいない状態でNFTの配布を行ったとて興味を持ったり、実際に受け取るのは元々NFTに興味があったりすでにこっちの界隈の人だけですよね。企業としてその層を獲得したいというのでやっているのであればいいでしょうが、正直な話いまの日本のCryptoユーザーを率先して獲得したい事業者はそう多くないでしょう。
例えばPayPayやmercariのポイント活用の施策は十分に有用だったと考えています。両者ともコアなユーザーがいる状態で提案したため、しっかりユーザーに刺さっていますよね。事業提案としても納得が行きますし、Web2ユーザーのオンボーディングのための足がかりとしてはすごくシームレスでしょう(PayPayの場合はインデックスや金に価格追従するポイント運用だが、あまり接点のないユーザーを障壁なく引き込んだのは設計としてすごく好き)。
上記を踏まえて最近のPontaポイントとかはかなりいい例でしょう。決して悪いことでは無いですが、ほとんどの企業がマーケティングなど一定の注目やブランディングを獲得するために使われがちで、私としては仕組みとしてのブロックチェーン活用が個人的に良い未来だと思ってます。それでコスト面かユーザー体験かその他でもどこかがプラスになるのであれば活用する価値があると。NFT Auth、NFT Pocket、BeyondClubとかは好きなプロダクトですね。
さいごに
なんかまあ話が長くなりましたが、もうすぐ3期を迎えるまだまだ新参者スタートアップの独り言として聞いてほしいんですが、やっぱりみんな企業向けに妥協した施策の提案はやめよう。あったらいいなとか自分がほしいものベースじゃなくて、企業の需要を汲み取ってサービス提供しようってことですね。
大体我々のようないちスタートアップがぽっと出で思いついたtoBプロダクトなんか大体要らんってこと。内部でどんなことが起こってるかわからないのに需要を満たせるわけがない。Utopiaが大好きな理由がそこにあって、こんなん使わないわけ無いでしょって思いましたがちで。
なんか話が脱線しすぎてすいません、自戒を込めて界隈への感想を書きました。こんだけ文句言ってるぐらいなので今後の弊社が絡んだ取り組みには期待していただけると、、(めっちゃ自分でハードルあげちゃった)。
なお上記の内容はすべて私個人の意見であり、所属する一切の企業や団体を代表した意見ではありません。ではまた明日のニュースレターでお会いしましょう。