こんばんは、今日は昨日に引き続き「LSDFi-CDPの可能性と限界」について話していきます。本来であれば前編と後編でのお届け予定でしたが、若干の体調不良とあまりにも長くなったので<中編>も加えて3つに分けてお届けします。
朝のニュースレターで調子乗ったことほざいてたらフラグ回収まで最短でした笑、季節の変わり目は体調気をつけないとなのでみなさんもご自愛ください、、!前編を見ていない方はこちらから↓
ほんとに最近LST活用系めっちゃ多くて飽和していますが、今後残るのは強烈なインセンティブ構造を用いた貨幣の機能性度外視のものか、先行参入者の二択だと個人的に考えています。それを踏まえた上で早速本文を見ていきましょう。
ステーブルコインについて単に発行額や利回りという観点でしか見ないことが多かったですが、最近の自分のニュースレターを読んでくれている方はかなり違った視点を持てるようになってきたかと思います。これだけが全てではないので、参考にする程度で問題ないですがぜひ見方の選択肢の一つとして活用していただけると!
Special thanks to @CaesarJulius0 and source
Raft($R)
Raftとは他のCDPと同様に清算リスクを伴う過剰担保型でLSTを裏付け資産として発行される「R」というステーブルコインを発行するためのprotocolです。ユーザーはDAIのDSR(sDAI)と似たSaving Rateに入金することで利回りを得られます。
イノベーションの欠如
Prasmaと同じくLiqutyのforkですが、比較して変更箇所がそこまで多くないので大きな機能面での優位性はない。LSTを活用するLiquity v2がローンチされると知名度や信頼感の観点からポジションを確立しにくい可能性がある。
交換媒体として機能していない
Rは利回りの高いステーブルコインとして存在していますが、protocolは交換媒体としての機能の実装を最優先にしていません。なので利回りを獲得するためだけにRを保有するユーザーしかおらず、流動性の不足などの問題点が挙げられます。
価格安定性への疑問
Rの価格の不安定さが浮き彫りになっていて直近まで長期間depegしていました。sDAIの利回りが低下したことによりRの利回りが自動的に勝っていまはpegに戻ってきましたが、長期的に見てより安定したpegの仕組みを提供する必要があります。解決策としては流動性の向上施策、利回り獲得に付随したもしくはそれ以外の部分で需要(ユースケース)を生み出すことですね。
競合に対する限られた優位性
現時点ではユーザーはRを借りるために金利を払う必要がないので、ETHを有効に活用できるってしか価値提案ができていません。ここがなくなったり、競合に真似された時点でRの優位性の大きな一つが欠落すること。
利回り資産としての機能
Rのホルダーへの利回り還元の仕組みは価値貯蔵として価値があるので、一定数の需要は存在しています。もしユーザーがpegの安定性を信頼するのであれば、mkUSDと同様にETHの利回りにエクスポージャーをもつ良い手段。
資本効率性の欠如
過剰担保を要するCDPモデルに共通することですが、RaftのRも担保率が120%以上じゃないと行けない点に加えて常に清算のリスクを持っているので、資本効率の面でFiat担保ステーブルコインに劣るものがある。
Gravita($GRAI)
GravitaとはさまざまなLSTを担保として受け入れているCDP protocolです。Raftと同様に基本的な金利手数料は0で、他と同じくLiquityのforkです。GRAIのmintは盛り上がっていたもの償還についてリリースが遅れたためか長期間depegしています。
イノベーションの欠如
他と同じくLiqutyのforkですが、比較して変更箇所がそこまで多くないので大きな機能面での優位性はない。LSTを活用するLiquity v2がローンチされると知名度や信頼感の観点からポジションを確立しにくい可能性がある。
交換媒体として機能していない
GRAIは利回りの高いステーブルコインとして存在していますが、protocolは交換媒体としての機能の実装を最優先にしていません。なので利回りを獲得するためだけにGRAIを保有するユーザーしかおらず、流動性の不足などの問題点が挙げられます。
価格安定性への疑問
GRAIはローンチしてから長期間0.98ドル付近を推移しています。償還機能の後期リリースが要因で鞘を取る人たちがいなかったからですね。ステーブルコインが1:1であり続けるために1:1で発行、償還し続けられる部分が実は重要で、市場が1ドル以上の場合は1:1で発行元から仕入れて市場に売る。市場が1ドル以下の場合は市場から仕入れて発行元に売る(召喚する)。このサイクルが成り立ち、利益を出してくれる人が居続けることが「Stable」の根源です。そこが逆転して信用不安に陥るとこの前のUSDCみたいに誰も鞘を取らなくなります。これが償還出来ない場合も同じですよね。また付随する課題として流動性と実需(ユースケース)の不足が挙げられます。
競合に対する限られた優位性
現時点ではユーザーはGRAIを借りるために金利を払う必要がないので、ETHを有効に活用できるってしか価値提案ができていません。一方でRと異なる点は、bLUSDを担保にできここでの利回りも二重に受け取れるって点ですね。
利回り資産としての機能
GRAIのホルダーへの利回り還元の仕組みは価値貯蔵として価値があるので、一定数の需要は存在しています。もしユーザーがpegの安定性を信頼するのであれば、mkUSDと同様にETHの利回りにエクスポージャーをもつ良い手段。
複数のLSTなどが担保利用可能な点
rETH、wstETHという有名どころのETHを担保利用できることはもちろん、WETHやLUSDを高い担保利用率(LTV)で担保利用できます。特にbLSUDを活用できる点はLUSDエコシステムの誘致で一役買いそうですね。
資本効率性の欠如
過剰担保を要するCDPモデルに共通することですが、RaftのRも担保利用率がLSTの場合は85%以下じゃないと行けない点に加えて常に清算のリスクを持っているので、資本効率の面でFiat担保ステーブルコインに劣るものがある。
Lybra($eUSD)
Lybraとは担保にETH系のLSTを担保に使用し利回りつきステーブルコインのeUSDを発行するCDP ptrotocolです。限られた実用性ではあるもののAPY8%というかなり強いインセンティブで発行量を堅実に伸ばしています。Lybra v2への移行に伴い、v1からいくつかの改善が行われる予定でかなり期待されています。
トークノミクスの欠陥
LybraのガバナンストークンであるLBRの存在価値と保有インセンティブについて、depoditされたETHを活用したLSTの利回りの殆どがeUSDへと分配されているのでLBRを保つ意味があまりない。eUSDについても強烈な保有インセンティブによって、わざわざ担保を指し出してmintするユーザーが減少し市場のeUSDの需要が過度に増えたためeUSDの価格が上乖離しています。よって交換媒体としての機能もなく、depegが長らく治っていない。
価格安定性への疑問
先程も触れたようにeUSD自体の価格の安定性にはかなり疑問が残ります。その仕組み上リスクとリターンの乖離が起こって、eUSDの需要が過度な状態を長期間推移しています。仕組みの大きな変更がない限りステーブルコインと呼ぶに足らず、長期的に何らかの問題へと発展しそう。
競合に対する限られた優位性
LST建てステーブルコインの普及可能性を探るためには、新しい機能として従来のステーブルコインに勝っている必要がまずはあります。eUSDはGRAIと異なり償還機能も提供されているため鞘を取れる点で価格の安定性や利益を生み出せるところが優れているように見えますが、担保率の高さと借りてまでeUSDを発行する担保の価格変動(清算)リスクの利益が見合っていないので結局この仕組みは破綻しています。
利回り資産としての機能
eUSDのホルダーへの利回り還元の仕組みは価値貯蔵として価値があるので、一定数の需要は存在しています。もしユーザーがpegの安定性を信頼するのであれば、mkUSDと同様にETHの利回りにエクスポージャーをもつ良い手段。
Lybra v2での改善点
いままでは純粋なETHかstETHしか担保に差し出せませんでしたが、担保利用可能資産に新たにrETHやWBETHのようなLSTを対応したためeUSDの発行量増加による流動性向上や価格の安定性向上が期待できます。
資本効率性の欠如
過剰担保を要するCDPモデルであることを前提に、担保率が150%を満たさないといけない点が他のCDPと比べて資本効率が悪い原因になっています。これを見るとなんでみんながeUSDを市場から買うかがわかりますね。
Ethena(USDe)
EthenaとはこれまでのCDPモデルの変わりにデルタニュートラルポジションを担保とし、競合優位性を出している新興ステーブルコインプロジェクトです。ちなみにUSDeはまだリリースされていないプロジェクトです。LST担保にレバ1倍ショートポジションを持ち、1:1の担保比率を実現し資本効率を100%にできます。またfunding rateから生み出される金利の利回りを享受できる点も嬉しいですね。
革新的なイノベーション
デルタニュートラルポジションのおかげで、清算リスクを回避するために必要な過剰担保を要しないため、資本効率の向上がもっとも期待できるCrypto建てステーブルコイン。
交換媒体としての機能
Fiat建てステーブルコインと同じ1:1での発行、償還にサポートしているので交換媒体としての利用を十分に期待できます。長期的な価格安定性の部分で言うと下記の点が議論の対象になるでしょう。
価格安定性への疑問
上手くこの仕組みが機能するかは正直実証してみないとわからない点が多く、理論上は提供できるがデルタニュートラルポジションの金利決定の特性上、ベアマーケットのショートが多い環境で上手く担保資産が価格割れせずに運用できるかには疑問が残ります。また発行額が増加するに連れてショートポジションの肥大化によるこれもfunding rate関連ですがキニナル。
資本効率の高さ
何度も触れますが資本効率という面ではこの方式のステーブルコインがいちばん高いです。厳密にはアルゴリズム型ステーブルコインの方が過小担保での発行をサポートしていることがありましたが、実現可能性の高さで言うとデルタニュートラルモデルがいちばんと言い切れます。
ユーザーからの疑問
デルタニュートラルモデルのステーブルコインはまだ広く浸透している仕組みではないので、コミュニティ内外での議論が起こることが予想されます。既にいくつか課題はありますが、焼き回しLST-CDPが大量発生している環境にはステーブルコイン界隈に新たな光が指したと言えるでしょう。
ETHのボラティリティからの脱却
担保として預け入れられたETHは価格変動にヘッジするためのポジション作成に利用されるため、ユーザーが価格変動による清算リスクにさらされる心配がなくなります。リスク回避策として有用ではありますが、これを利点と捉えるか、欠点と捉えるかは人それぞれ。
長くなったので今日はここらへんにしておきます。続きは明日、流石に明日で完結すると思うのでぜひ最後まで勉強していただけますと!