みなさんこんばんは、昨日のステーブルコインの記事はいかがでしたか?ちょっと踏み込んだ内容かな?と思いましたが意外とたくさんの方に見ていただけました。まだ昨日の夜のニュースレターを見ていない方はこちらから↓
とはいいつつも今日紹介する内容が昨日の内容の元になった文章なので、こっちから読んで昨日のに戻るのでも大丈夫です。それも自分が今日の内容を踏まえた上での提唱の記事を先に読んじゃったもんで、そこから元の議論の記事に辿って筆者にコンタクトを取ったら翻訳をご快諾いただけたなどの流れでして。
今日はそんな感じでAvalancheのEcosystem contributorのCaesar氏に協力いただき、ステーブルコインの疑問を解決するいくつかの機能性について昨日話した内容と一部重複しますが解説します。翻訳、引用、解説等にご快諾くださりありがとうございます。ぜひCaesar氏のフォローを↓
ステーブルコインはCryptoおよびDeFiエコシステムで重要な役割を果たす上に、成長に大きく貢献したイノベーションの一つです。ホルダーに価格の安定性を提示することで、不安定なCryptoエコシステム内でのユースケースとして十分PMFしていると言えるでしょう。しかもTradFiとの橋の役割もしっかり担えています。
エコシステム内ではステーブルコインに関する研究や議論が盛んに行われており、市場のシェアを獲得しようとする新興プロジェクトも多々。しかしCrypto民とステーブルコイン領域の事業者の間でステーブルコインに対するビジョンが一致しているようには思えません。このことから市場の将来を形成していくためにステーブルコインが提供すべき価格提案に関する理解不足の溝を埋める必要があります。
本文ではCaesar氏の「ステーブルコインがどのような価値を提供するべきか」についての考えと思い描くステーブルコインの将来像について説明します。そのためにまずは貨幣の本質を理解する必要があり、その上でステーブルコインの価値に関する命題への解決策としてステーブルコインの機能性という概念の共有を行います。
貨幣への理解を深めよう
皆さんにも身近な存在の貨幣は、人々が財やサービスを売買し取引するための手段として一般的に受け入れられている交換手段の機能を持っています。貨幣が価値を持つのは、取引の決済手段として使われることが社会全体で合意されているからです。
価値の保存機能: お金の価値を貯蔵できる機能
交換(決済)機能: 支払い能力を持つ機能
価値の尺度機能: ものの価値を表す機能
ではステーブルコインではどうか、ステーブルコインの価値提案はどうあるべきなのか?貨幣にはこの機能の定義があるのにステーブルコインについてあまり語られてこないのは、Cryptoエコシステムの貨幣の役割を担っているのにおかしいですよね。
まずステーブルコインの定義について、一般的に単なるオフチェーン資産にpegしたデジタルのオンチェーン資産といえます。
例えば米ドルに裏付けられたUSDTやUSDCなどのステーブルコインの価値提案は、元々の現金である米ドルに由来するべきでそれ以上でもそれ以下の存在であってもいけないものとします。なので前提として米ドルの価値や機能に沿ったものである必要があり、新たなユーティリティの付与はステーブルコインの利点や目標、目的から逸脱するものになり長期的に意味があるものなのかを問う必要が出てきます。
この結論に則って担保付き債務ポジション(CDP)、利回りが発生するモデル、インターネット債モデル、レバレッジイールドファーミングなど特殊な機能を付け加えたステーブルコインの存在は限定的な価値しか生みだしていないだろう。現に上位のシェアを獲得しているステーブルコインがFiat建てで余計な機能が無いように。
しかしここまでは少し理想論とCrypto界隈の思想に反する内容も含んでいて、例えば前途の中央集権的なステーブルコインたちの検閲耐性はあるのだろうか?誰かがアドレスを検閲するように要求して応じた場合は、DeFiエコシステムからそのステーブルコインは受け入れられなくなるでしょう。なぜならDeFiの理念に反しているから。
なのでDeFiのために機能して米ドルの価値を保つ分散型のステーブルコインが必要だと感じる一方で、そんなステーブルコインを作るためには貨幣の機能などの一連の議論を踏まえた上でステーブルコインの価値提案がどうあるべきかを理解する必要があります。
ステーブルコインの価値提案と機能フレームワーク
前途の通りステーブルコインは貨幣をデジタル、オンチェーン化したものです。したがってデジタル空間で使用されることを考慮し構築された貨幣とし、従来の貨幣の価値提案を提供することは大原則として必要条件なことを改めておさらい。そして今後はこのことを「ステーブルコインの機能性」と呼びます。
ここの話の詳細は昨日のニュースレターでも話しています↓
交換媒体
ステーブルコインの主な用途は取引の円滑化で、まず交換媒体として機能しなければステーブルコインが持つスケーラビリティという意味での利点とその先の成功が本質的に制限されていしまうことになります。現在他のトークンと取引するために広く使用されているのは、USDTやUSDCとまだ多くはないですがDAIも少し。他のステーブルコインは交換媒体として機能するだけの流動性、ネットワーク効果、ホルダーを十分に有していない。
価格安定性と価値貯蔵
ステーブルコインはボラティリティの高い暗号資産業界の中で資産を保管、保護するための貴重なツールです。なのでpegした状態を維持する重要性は高く、ほとんどのステーブルコインはこの点で評価されがちです。利回りの高い新興ステーブルコインのほとんどは、LSTまたは独自のガバナンストークンを介してホルダーとステーキングを行ったユーザーに利回りを提供しています。インフレからの保護として有用で、利回りを持つステーブルコインの発行量や流動性にはいい影響を与えている設計とも言えます。
資本効率
ここでの資本効率とは、ユーザーが一定数のステーブルコインをmintするために必要な資本の量を指します。Fiat建てのステーブルコインは中央集権的な運営の介入があって1:1の比率での交換を実現しています。Crypto建てのステーブルコインは清算リスクを伴う過剰担保(一般的に110~600%)を必要としスケーラビリティと資本効率に大きな影響を与えます。一方で資本効率を犠牲にしてステーブルコインのエコシステムにPermissionlessなソリューションを提供可能な設計にしています。
On/Off-ramp
前途の通りステーブルコインはpegしている元のオフチェーン資産のデジタル化及びオンチェーン化したものです。従って銀行などが保有する裏付け資産とのシームレスな交換は普及と使いやすさを促進させるためには不可欠な要素です。よってOn-rampとOff-rampのソリューションを提供せずして、ステーブルコインの覇権を取ることは中央集権、被中央集権問わず難しいです。
検閲耐性
中央集権的なアクターによる潜在的な悪用からユーザーを保護することの重要性を検閲耐性として認識する必要があります。この点でUSDTとUSDCの双方に欠陥があることを考慮すると、検閲に強いステーブルコインはエコシステムの発展において重要な要素です。
ステーブルコインの機能の重要性
ほとんどの人はこれらの主張を目新しいものではなく、ステーブルコインのコミュニティの中で常に交わされているものに一部の考察を付け加えたもののように思うかもしれません。しかし誰も議論したがらない大きな議論が付随しています。
暗号資産に裏付けられたステーブルコインは破綻している。そう話す人もいるように、エコシステムで真に持続可能な価値を提供できているかというとそこには大きな疑問が残ります。USDTやUSDCのようなFiatに裏付けられたステーブルコインを除いて、分散型ステーブルコインは以下の用途のみに使用されます。
担保付き債務ポジション(CDP)
利回りが発生するモデル
インターネット債モデル
レバレッジイールドファーミング
Caesar氏曰く、これらを一切不要なユーティリティだとは言わないが、DeFiが持つ風景がこれであってはならないと提唱します。Ethereumはローンチして8年が経ちましたが、未だにステーブルコインのこれらの機能を実現できたものはありません。この問題をStablecoin maxiやDeFi degenが解決しようとしていないことが残念です。だってDeFiの大半がUSDT、USDCに依存しているっていうのに。これって本当の意味でのDecentralizeを実現できているのでしょうか?
つまりのところCrypto建てのステーブルコインは、貨幣の主な価値提案の一つである交換媒体としての機能を一切成していない。なので分類すると分散型ステーブルコインではなく「financial leveraged primitives」を提供するprotocolに過ぎないと。
でもいまの現状に希望が一切無いわけではありません。DAIを除いた分散型ステーブルコインだけでもTVLが20億ドル、2万人のホルダーがいることを考えると従来のモデルの大きな変更を行うことでステーブルコインエコシステムの方向感を大きく変えられる可能性は十分に秘めていると。
だってよく考えてみてくださいよ。CEXでLUSDを使ってSOLを買ったり、DAIを使ってAvalanche上でやり取りをしたり、crvUSDを使ってチームに給料を払わないのはなぜでしょうか?答えは明確で既存のCrypto建てステーブルコインは貨幣のデジタル版では無いから。また現在のモデルには資本効率の高い方法でステーブルコインを発行することを重視しずぎて、規模を拡大する技術的能力が根本的に欠けているから。
さいごに
まとめとして私たちはこれから流動性の高い、清算リスクのない1:1で交換できる担保を要するステーブルコインの構築に注力することが理想的であるといえます。こういったステーブルコインを良いものと認識して選択し、普及を推し進めていくことで今後DeFiのUSDTとUSDCへの依存度を押し下げることができます。
でも残念なことに現実はほとんどのビルダーはFiatに裏付けられたステーブルコインの優位性を受け入れ、その優位性を越えようと挑戦をしていません。このまま貨幣の機能を構築しなければステーブルコインを取り巻く環境においてPMFすることはないことを認識するべきです。本当にその交換機能を持たないステーブルコインが市場に対して必要なのかどうかを。
これを達成するためには現在のモデルでは資本効率の良い方法を提供できないため、まずはステーブルコインの新たなmintの仕組みを研究する必要があります。また流動性を向上させるためのトークノミクスも然り。昨日と今日のOhayoでトークノミクスについて解説しているのでまだ読んでいない方はこちらから↓
文中で触れた「financial leveraged primitives」的なものではなく。デジタルの次世代の貨幣を構築する必要があり、デルタニュートラルモデルのステーブルコインには十分可能性があるように感じているので、今回の問題を解決するためにどう作用するかなどは別の機会に話します。
いま既にある当たり前を当たり前だと思わずに、常に改善をするべく業界全体で研究を進めていく必要があります。いまの寡占的なステーブルコインの市場を大きく変えるプレイヤーは誰なのか。ぜひ今後も情報を追っていただけると嬉しいです。