最近めっちゃステーブルコインの話を書いていますね、これを機にステーブルコインないしCDPに関してがっつり読み返してるからが故のやつです。今週いっぱいぐらいまではステーブルコインの話多めだとは思いますが、少々お付き合いいただけますと私としてもめちゃくちゃ嬉しいです。
そして今日も今日とて先日の記事でお世話になったCaesar氏の別の勉強になる記事の翻訳をご快諾いただけましたので、解説しながら翻訳していこうと思います。
前回のインプットとアウトプットの話で話したか覚えてないんですが、どんどんまずインプットの質を向上させるとアウトプットの質がめちゃ上がるので、出てくる疑問や議論の対象の質も自ずと向上します。なので日本語の情報じゃ物足りなくなって自分も海外の人の情報や議論を読むことが多くなったって流れです。
いまのステーブルコインは市場の需要に大きく合致していいて、常にブロックチェーン界隈の議論の中心になっています。それ故にエコシステムの発展に大きな影響を与えてきました。その中で色んな分散型ステーブルコインの設計が研究されてきましたが、正直なところ成長のスピードはFiat建てステーブルコインよりも緩やかでした。
Caesar氏はこの原因をCrypto建てステーブルコインに対する本質的な限界についての議論が十分にされていないからとしています。現在の分散型ステーブルコインプロジェクトのほとんどは、資本効率、清算リスク、限定的なユースケース、流動性といったいくつかの項目においてFiat建てステーブルコインの利点を制限したものでしかなく、ユーザーにとって魅力があるかないかでいうとほとんどない。
この記事を通じて現在のステーブルコインの状況についていくつかの統計情報を参考にしながらそれらへの考えを共有します。そしてステーブルコイン市場がなぜいまの状況なのかを理解するために役立つ概念として、先日紹介したステーブルコインの機能性とともに見てみます。そして最後にCrypto建てステーブルコインを個別に見ることでそれぞれの問題点を取り上げてみましょう。
ステーブルコイン市場の統計
ステーブルコイン市場全体の時価総額は1240億ドルでUSDTとUSDCで約87%
市場全体の約92%にあたる約1160億ドルがFiat建てステーブルコイン
Crypto建てステーブルコイン市場は約70億ドルでDAIだけで約50億ドル
アルゴリズム型ステーブルコイン市場は約20億ドルでFRAXとUSDDで約75%
これらのデータからいくつかの考察ができます。
USDTとUSDCは十分にPMFを達成しユーザーと市場ともに需要と一致している
Crypto建てステーブルコインのプロジェクト数は日に日に増加しているのに、USDTやUSDCなどの市場シェアを抜きそうなものは未だ登場していない
DAIはDSRを上昇させたことにより市場のシェアを大きく拡大でき、Crypto建てステーブルコインの中での優位性はあるものの不安定な供給量を推移
DAIはCrypto建てステーブルコインの中でかなりの発行量を誇るが、裏付け資産のRWAの依存度の高さが故の検閲性とカウンターパーティーリスクの高さがある
DAIを除く他のCrypto建てステーブルコインのユースケースは限定的で、成功可能性について過大評価されている可能性が高い
FRAXもアルゴリズム型からの脱却を図ろうとしていることから、市場でのアルゴリズム型ステーブルコインの需要と成功確率の低さを表している
USDTとUSDCの信頼性が大きく損なわれるような大事件が発生するか、画期的なプロジェクトが登場しない限り、ステーブルコインの現状が変わる可能性に注目すべき理由は特に無いであろう
USDTとUSDCがなぜ好まれるか
Cryptoは自由を求め、非中央集権からの脱却、中央集権的な主体へのアンチテーゼ的な動きをもとに発展をしてきた領域ですが、現在のステーブルコイン市場を見てそんな事が嘘でも言えるだろうか。そうでは無いことを物語ってしか無い。
最も中央集権的で最も透明性の低いプロジェクトがCrypto市場を牽引し、このベアマーケットの中でも市場の大きさを確立しているのは最高にギャグですよね。
より多くの人が参入してくるに連れてエコシステムの思想的純度が低下していることは否めなく、仕方ないとも言えるがそれでも良いのだろうか。ステーブルコインの機能性としていくつかのトピックを理解するための新しい概念を共有します。
ユーザーとステーブルコインプロジェクト間の市場ダイナミクス
普及するステーブルコインとしないステーブルコインがある理由
ステーブルコイン開発者やプロジェクトが持つべきビジョン
上記のことを踏まえた上で、ステーブルコインの機能性については先日の記事を読んでいただけると理解が深まると思います。ここでは説明を省略します。
まあこの機能を見る限りUSDTやUSDCなどのFiat建てステーブルコインがいちばん機能を満たしているので、伸びるのはわかりますよね。Crypto建てステーブルコインでこの機能を満たせる、もしくはUSDTとUSDCを超えられるものはあるのか。
Crypto建てステーブルコインへの評価
これまでのことを踏まえた上で、いまあるCrypto建てステーブルコインをあらゆる側面から理解するために評価していきましょう。
各ステーブルコインの評価を始める前に、CDP(Collateralized Debt Position)のモデルには清算リスクをカバーするだけの過剰担保を伴うローンをユーザーに要求するために本質的な限界があることを理解するべきです。具体的にステーブルコインの機能性の中の項目の「交換媒体」と「資本効率」の部分を満たしていません。
DAI
DAIはMakerDAOの発行する過剰担保型CDPステーブルコインです。Crypto建てステーブルコインでは最大の発行量で、DeFiエコシステムにも適応しています。一方で他のCDPの登場や、USDCのdepegに起因したDAIのdepegなどがあり、市場のシェアを大きく落とすことになりました。しかしDSRを戦略的に上昇させたことによって市場シェアの大きな拡大を遂げたとともに、その持続可能性が浮き彫りになりました。
treasuryにある資金の運用はエコシステムで最も収益性の高いビジネスの一つである一方で、「$DAI is poor man’s $USDC」と言われたり、中央集権的なアクターに依存しているな、いくつかの批判による将来性への疑問もある。
MakerDAOチームが分散化の理念と決別し、protocolの収益化に焦点を充てることを決定したのは見ていて明らかですね。ビジネス的判断として決して悪い言いませんが、なぜUSDCではなくDAIを使うべきなのかという疑問は出ているのは周知の事実、そしていくつかのDAIが直面している課題をいくつか。
イノベーションの欠如
DAIはCDPによってmintされ、過剰な担保を要するモデルになっているので、Fiat担保型ステーブルコインを始めとする競合のステーブルコインとの資本効率という観点で大きな優位性を持っていません。DSRの向上によってユーザーを集める方法に走ったのが顕著で、ユーザー獲得に苦労しているのが目に見えています。
中央集権的なアクターへの依存度の高さ
DAIの裏付け資産の多くがUSDCとRWAによって構築されており、Makerの主な収益源はそれらの資産や更にその裏付け資産から発生するので、四捨五入すると中央集権ステーブルコインと言われちゃっても仕方ない。
重要な価値提案がない
Crypto建てステーブルコインの主な価値提案は、非中央集権的で検閲耐性の高さにあります。だからトレードオフとしてCDPの資本効率の悪さを許容していると。しかしDAIはこれらの欠点を維持する一方で、分散化という価値提案を失いつつある。なのでFiat建ての悪いところと、Crypto建ての悪いとこを持ち合わせたステーブルコインであるということ。
ユーザー獲得に苦労している的な話はここの中の「ステーブルコインボロ儲け時代の終了か」でも話していますのでぜひ併せて読んでみてください↓
かと言ってDAIにチャンスが無いわけでは全然ないのでそこも少し紹介します。
高い採用率
DAIはエコシステムの中で最も有名で広く普及しているCrypto建てステーブルコインと言えるでしょう。EtherScanの情報によると現在50万人のホルダーがいて、流動性のほとんどがDeFi上に形成されているということ。他のCDPステーブルコインの突破が難しいポイントのいくつかを既に突破しているので非常にいいポジションを獲得していると言えるでしょう。
交換媒体
DAIは多くの人から交換媒体であると十分に認識されています。取引ペアとしてDeFi上で利用されており、先程と重複しますが多くの流動性が既に市場にあるので優位性は十分にあるでしょう。
価値の貯蔵
利回りが上昇したDSRを通じてDAIをステーキングしたユーザーに分配されるRWAの実収益の促進によって、信頼性と利回りを価値として提供することで普及の後押しにできる可能性がある(が、本質的に耐検閲性の低さの要因になっている点は解決されていません)。
前半はここまで
まだまだ他にも「FRAX」「LUSD」「eUSD」「crvUSD」があるのですが、今日はここらへんまでで前半とし、明日また後半部分をお届けします。
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