この界隈でいたら一度は持ったことがあるであろう「ステーブルコイン」、乱立して競争が起こっているのはいい環境ではあるものの、結局のところどのステーブルコインがどの点で長けてて「良い」ステーブルコインなのでしょうか?
そういえばBluechipからステーブルコインの格付けが出てはいましたが、なんとも言えない感じだったので他の人の意見なども探していたところ、幸運なことにステーブルコインの評価、分析に関する記事が流れてきました。ちなみにまだ昨日の夜のニュースレターを読んでいない方はこちらから↓
今日はData AnalystのSocioCrypto氏にご協力いただき、オンチェーンデータを活用したステーブルコインの機能分析について解説します。翻訳、引用、解説等にご快諾くださりありがとうございます。ぜひSocioCrypto氏のフォローを↓
Special thanks to @SocioCrypto
ステーブルコインはブロックチェーンのエコシステム、特にDeFiの世界において重要な役割を果たす中心的存在でありながら、同時にいくつかの懸念を生み出している元凶とも捉えることができます。例えばTerra(UST)の一件が顕著で、ステーブルコイン起点の出来事がエコシステムの脆弱性になっている部分もあるし、明らかにステーブルコイン規制強化の波がCrypto全体にも波及しているし。とは言いつつなんだかんだステーブルコイン関連のプロジェクトは増加の一途をたどる現状。
この業界内外からの関心の高まりと堅牢なステーブルコインの必要性から、ステーブルコイン自体をより理解し、その機能性を評価するための理論的なフレームワークが必要だと考えています。
またAvalancheのEcosystem contributorであるCaesar氏は最近投稿した記事で、ステーブルコインの重要な側面を理解していく上でコンセンサスの欠如、プロジェクトの方向性の不確実性について指摘しました。一般的なステーブルコインはどれもステーブルコインの価格への言及が大半で、もちろんステーブルコインなので価格は重要なのは前提としてある中での「機能面」を比較しないとってこと。なので今回はCaesar氏の提唱する5つの項目で実際に主要なステーブルコインを見てみましょう。
交換媒体
ステーブルコインは他のトークンとの「交換媒体」として機能し、よりシームレスな取引を促進させる存在でなければいけない。ここに十分に当てはまるステーブルコインは数えるほどしかなく「USDT、USDC、DAI」などが該当するでしょう。その他のステーブルコインは交換媒体として機能するための十分な流動性、ネットワーク効果、ホルダー数、資本効率のいずれかが欠けていることが多いです。
ステーブルコインがどれだけ交換媒体として機能しているのかは、ステーブルコインの送金頻度を調べ、どれだけ取引数があるのかを見ることで評価できます。また他のトークンとのスワップ(取引量)も見ることで、そのステーブルコインがどれだけの取引を促しているのかも評価できます。
価格安定性と価値貯蔵
ステーブルコインはボラティリティの高いCrypto市場における資産を守るツールとして機能するべき。そのためには安定した価格の維持、いわゆる価格安定性が最も重要な要素でありほとんどのステーブルコインが目指している場所はここにあります。
同様に価格安定性という意味でいうと安定している期間も重要でありながら、depegを起こす頻度も重要な指標ですよね。ステーブルコインの有用性的な視点から考えてみると、ユーザーの利用パターンを通じて考察することができ、流通量とその推移から価格の安定性が生み出されているケースが多いです。実際にdepegが起こったときを観察しているとDAIやUSDCよりUSDTやBUSDの方が価格が安定してました。流動性とも相関しているのでめっちゃ発行量とは関係ありますね。
更には多くの新興ステーブルコインは「yield-bearing stablecoins」に分類され、LSTやガバナンストークンを通じてホルダーやステーキングしたユーザーに利回りを提供しています。インフレからの保護として有用で、利回りを持つステーブルコインの発行量や流動性にはいい影響を与えている設計とも言えます。
資本効率
ユーザーが一定量のステーブルコインをmintするために必要な資本量という意味での資本効率。USDTやUSDCのようなUSD-peggedなステーブルコインやEUROCのようなEURO-peggedなステーブルコインは、Fiarを裏付け資産とし中央集権的な運営の介入があって1:1での交換に対応しているいい例です。一方で暗号資産担保のCDPは、一般的に過剰担保を必要とし資本効率という意味では落ちてしまいます。中央集権か否か、Trustが必要かTrustlessな環境かでそれぞれトレードオフの関係にあります。
Fiat建てステーブルコインの資本効率は100%だとして、CDPとなどのFiat建てステーブルコイン以外の資本効率は単純に担保比率の逆数で求めることができます。例えば2万ドルのトークンを担保に1万ドルのステーブルコインを発行した場合、担保比率は200%になり資金の利用率は50%っていう計算方法です。またこの資本効率に発行や償還に係る手数料(gas代などを含む)も考慮しないといけません。定額で手数料がかかるケースは少額の発行、償還になるほど資本効率が著しく低下します。
On/Off-ramp
Fiatとステーブルコインのシームレスな変換、いわゆるOn-rampとOff-rampはCryptoの普及とエコシステムの拡大、ユーザー体験を向上させるための重要な要素。いちばんオンチェーンで見れる指標としてはCEXへのステーブルコイン流入量です。
例えば直近の6ヶ月間の数値をみると200億ドル以上のUSDCとUSDCがAvalanche上だけでもCEXに送られています。ちなみにUSDTよりUSDCの方が発行量全体から見た相対的な流出が顕著。
検閲耐性
検閲への抵抗、そして取引の自由、没収可能性からの開放、取引の不変性はブロックチェーンの必然的な原則でありステーブルコインも則る必要がある。この原則に従わないプロジェクトは長期的に失敗を意味することが多いです。ステーブルコインの検閲耐性を評価するためにはDeFi内での採用レベルを見ます。
DeFi内でのステーブルコインの採用と統合のレベルは、高い検閲対抗性を示すものになるかもしれません。加えて様々なprotocol、国境を超えた支払い、送金、取引に関連するプロジェクトにどのぐらい採用されているかも一つの指標にできます。単一のユースケースではなく、広く使われているもののほうが検閲耐性は高くなる可能性を秘めています。
結論と今後の研究の方向性
最後に原文の筆者であるSocioCrypto氏の一連のリサーチに付随して、今後どのような研究をすすめていく予定かを紹介します。
この記事ではステーブルコインを機能性という観点から評価するために、Caesar氏のフレームワークを考え直し、実証実験とオンチェーンデータの活用の重要性を強調するものです。この分析を通じてステーブルコインの機能性を厳密に分析できることを示し、この分野における議論や研究に新たな選択肢を与えることを目指しています。
今後はさらに検討するべき有望な方向性がいくつかあり、例えばAGXやAUXのようなコモディティに裏付けられた新たなステーブルコインなどのに適応した新しい機能面での比較項目を考えることができたり。これらはUSDTやUSDCのように中央集権的な仕組みを採用しているものの、USDやEUROなどのFiat-peggedではない点から同じものさしで測ることは難しいですよね、そこらへんも考慮してまだまだ考える余地があるおもしろい領域です。
もう一つの興味深い視点はオンチェーン分析とユーザー調査の統合、ユーザーがどのようにステーブルコインの機能性を認識しているかをオフチェーン情報として収集し、オンチェーンデータとの乖離をみることで見えてくるものもあるはず。
またオンチェーンアナリストは、これらのフレームワークを利用して包括的な分析ダッシュボードを効率よく作ることができます。ダッシュボード作成は業界自体を健全に発展させ、業界内での監視、評価を確立させていくための重要なツールとして機能します。ここからは私の意見ですが、先日紹介した情報発信する意味ってところにも共通し、できるひとができることをやっていくっていう細かな積み重ねでも業界に貢献できるってことを改めて覚えておいてほしいです。せひこちら参考記事として↓
さいごに
ステーブルコインの評価に関して、流動性と裏付け資産だけで見られることがいままで多かった一方で、それらは当たり前の前提とした、上層の「機能」面でしっかり比較していく必要があるなと改めて思いました。ステーブルコインに関するFUDが多く流れる中、オンチェーンデータは嘘をつかないのでぜひDuneなどを触ってみていただけると自分がオンチェーンデータを簡単にみれるようになります。Duneの個人的大先生はGussan.ethなので講義と併せてぜひフォローを。
あと本記事の原文を執筆したSocioCrypto氏が参考にした記事を書いたCaesar氏に連絡をしたところ、翻訳OKを頂いたのでどこかのタイミングで解説を交えた翻訳記事を投稿できればと考えてます。ぜひぜひメールアドレスを登録してお待ちを!