みなさんこんばんは、ちょっとステーブルコインの話も飽きてきてそうなので流石にちょっと今日喋ったら数日は一段落しようかな?と思っております(とか言いながらまた明日もステーブルコインの話をするかもですが笑笑)。
今日は昨日お話した「Crypto建てステーブルコインの現実」について、残りの部分を<後編>としてお話できればと思います。まだ昨日のニュースレターを読んでいない方はぜひこちらから先に見ていただけると内容がわかりやすいかと思います。内容については軽く文頭で解説しますので時間のない方はいまはスキップでもOK↓
また改めてになりますが、本記事の原文を執筆していらっしゃるCaesar氏のご協力には深く感謝します。ぜひ読み終わった方はフォローしていただけると嬉しいです!
前回の軽くおさらいをしてから本文に入ります。まずステーブルコインの成長の要因は間違いなく市場と需要とのマッチ、いわゆる「PMF」したと言えますが、オンチェーンの処理のみで発行される仕組みの「CDP」、Crypto建ての過剰担保ステーブルコインは、その仕組みが故の「限界」をあまり議論されずにステーブルコインの9割以上のシェアをFiat担保型の中央集権的な存在に握られることに。
その上でステーブルコイン全体に求められる要件を「ステーブルコインの機能性」とし、Fiat担保型とCrypto担保型のそれぞれの「優位性」、そしてトレードオフから生み出される「価値提案」をもとに各ステーブルコインへの評価を行ってきました。
昨日はCrypto建てのステーブルコインの王「DAI」について評価しましたが、今日は前回の最後に話した残りの「FRAX」「LUSD」「eUSD」「crvUSD」の4つについてCaesar氏の意見を翻訳と解説をしながら話していけたらなと、では早速本題に。
Crypto建てステーブルコインへの評価
これまでのことを踏まえた上で、いまあるCrypto建てステーブルコインをあらゆる側面から理解するために評価していきましょう。DAIについては解説が終わっているので、キニナル方はまずは昨日のニュースレターに一旦戻ってください。
FRAX
FRAXはアルゴリズム型ステーブルコインとして、一般的なCDPの過剰担保とは真逆の過小担保で発行できる仕組みを提供していました。しかしUSTの暴落を機にアルゴリズム型ステーブルコインへの信頼が失われたため、Fraxチームは発行モデルを変更して準備金が100%を上回るようUSDCも担保資産として採用しました。でもまたこれもDAIのように批判され「poor man’s $USDC」と揶揄されることに。
、、、と思いきやまもなくリリースされる「Frax V3」でこのモデル自体にも大きなテコ入れを行うようで。まだ全ての概要が明らかになっている訳ではありませんが、USDCを担保資産として利用せずに依存度をなくすことや、担保資産が米国債になることが噂されています。ではいま持っている課題を見てみましょう。
中央集権的なアクターへの依存度の高さ
担保資産にFiat担保ステーブルコインがあるので、DAIと同じく裏付け資産の部分で指摘されがち。なぜ、わざわざFRAXを保有するのかという議論に。
リーダーシップやチームのビジョンのブレ
この批判が妥当かどうかは追加で議論の余地がありますが、短期間に集中した開発リソースを割く現状や、ロードマップが良くも悪くも頻繁に変わる点においてFraxチームのビジョンのブレを見ているように感じます。
ホルダーやユーザーと時価総額のズレ
Etherscanの情報によるとFRAXのホルダー数は現在8,100人弱しかおらず、発行枚数が6億7,000万枚なことから考えると、流通範囲が小さく交換媒体としての厳しさが分かるでしょう。ちなみにDAIは49.6万人に対して38億万枚なので1人あたりの保有枚数から見て流通範囲が広いですよね。正直なところCurveでCRVのインセンティブがついているから保有されているだけで、いまはFRAXの寿命をCurveが握ってる構造とも言える。
一方でFRAXにも未来がないわけではありません。
資本効率
現時点ではユーザーは1ドルに対して1ドルのFRAXを発行できるので、他のステーブルコインよりも資本効率が高いと言えます。この資本効率はV3への新モデル移行をしても後続される予測でFRAXが持つ強い競合優位性です。
FRAXのエコシステムを発展させユースケースを促進させる
ほとんどのステーブルコインはユースケースの問題に直面しています。しかしFraxは将来性で少し他のステーブルコイン系と異なり、Fraxswap、Fraxlend、Fraxferry、あとFraxchainの登場も加味するとFRAXを内包するエコシステム自体の発展でホルダーを増やしユースケースを創出し、十分に交換媒体として機能させられるポテンシャルは持ち合わせています。
LUSD
LUSDは耐検閲性の高いステーブルコインとして独自性を持っているので、エコシステムでいちばんfolkされているステーブルコインプロジェクトです。LUSDはETHを担保にmintすることができ最低担保率が110%とかなり攻めた借り方もできます。
さらに最近のLiquityの発表からも分かるように、Liquity V2のローンチに伴い担保の価値を維持するためにデルタニュートラルを活用した新しいモデルの構築が予定されています。既存のプロジェクトと比較した大きな優位性になるでしょう。これとは対象にLUSDが直面している課題をいくつか。
限界のあるスケーラビリティ
LUSDはステーブルコインエコシステムの中でも価値あるものではあるものの、清算リスク回避のための過剰担保を要求され、担保として提供可能な資産がETHオンリーなので最もスケーラビリティの低いステーブルコインと言い換えることができるかも。
ホルダーやユーザーと時価総額のズレ
Etherscanの情報によるとLUSDのホルダー数は現在7,900人弱しかおらず、発行枚数が2億8,000万枚なことから考えると、流通範囲が小さく交換媒体としての厳しさが分かるでしょう。
ユースケースの欠如
LUSDのスケーラビリティの低さから主要なprotocolでの十分な流動性が見つからず、LUSD普及の障害点になっている。
資本効率
発行には清算リスクを回避する過剰担保を必要とするため、LUSDが交換媒体として扱われる能力を制限しており資本効率の観点からいい選択ではない。
次にLUSDが持ついいところを見ていきましょう。
耐検閲性の高さ
LUSDの特徴の一つは「分散性」と「耐検閲性」の高さでこの分野で右にでるものはいません。frontendも公式だけではなくいくつか提供されています。
協力なブランド力
LUSDの分散性との長期的なpegの安定性から、コミュニティへの信頼感は他のプロジェクトよりも獲得していてこのブランドを上手く活用できる。
Liquity V2
Liquityチームはprotocolのスケーラビリティへの課題を認識しており、エコシステムを破壊することなくスケーリングするための研究を進めています。ボラティリティによる損失を防ぐために、原資を守る方法としてデルタニュートラルポジションを活用しています。これによってスケーラビリティに関する問題は一定数解決が見込めます。
eUSD
eUSDは担保にLSTを使用するステーブルコインですが、利回りが8%発生するので唯一長期間1ドルから上乖離していることで有名です。他の仕組みは一般的な過剰担保型ステーブルコインと相違ないです。いくつかの直面している課題を見てみましょう。
資本効率
他のCrypto建てステーブルコインと同じように、清算リスクを回避するための過剰担保は資本効率を大きく下げています。
ユースケースの欠如
eUSDにユースケースはほぼ無い上に交換対象や交換媒体としての利用メリットの創出が見込めません。スケーラビリティの制限にも繋がっています。
成長可能性の制限
LSTを活用することはユーザーの需要を十分に満たしているように見えますが、競争的な市場なので大きく成長できるprotocolは一握り。
pegの安定性
eUSDホルダーはLybra Financeのガバナンストークンなどではなくボラティリティの低いETHを報酬で受け取れるため、ステーブルコインの発行量が市場の需要を大きく上回っています。よって1ドル以上の価格で推移し、大きくdepegしています。仕組みを改善しない限りpegは今後も難しいでしょう。
上乖離depegは珍しいeUSDですが、いいところももちろん存在しています。
利回り発生資産としての価値
eUSDはホルダーへの還元という点で差を付けているからこそ需要過多な状態になっていて価値の貯蔵に使用したい人が多いことを表しています。もしユーザーがpegを信頼するのであればETHの利回りにエクスポージャーを持つことはいい選択かもしれません。
LSDFiの可能性も考慮
先程成長可能性の部分でLSTに否定的な意見を書きましたが、十分に求められていて市場の大きさ自体はあるのでエコシステムでしっかりポジションが取れればかなり大きなシェアを持つことになりそうです。
crvUSD
crvUSDはCurveが開発しているLSTを担保にした過剰担保型ステーブルコインです。まだステーブルコインエコシステムの中で研究中のLLAMMAという清算システムを採用しているのが特徴で直近ではいちばん発行量を伸ばしています。
これまで大きなdepegが発生することもなく順調なようなプロジェクトに見えますがいくつかの解決しないとな課題があります。
資本効率
crvUSDは清算リスクのあるCDPの過剰担保型ステーブルコインなので、資本効率の点でFiat型に劣るものがある。
ユースケースの欠如
crvUSDがローンチ当初だからというのも否めないが発行量の割に流動性が無いのでそもそものユースケースが不足しており、crvUSDを含んだプールはいくつかありますが魅力的ではない。
ホルダーやユーザーと時価総額のズレ
Etherscanの情報によるとcrvUSDのホルダー数は現在644人しかおらず、発行枚数が1億1,100万枚なことから考えると、流通範囲が小さく交換媒体としての厳しさが分かるでしょう。
次にcrvUSDの優れている点についても見ていきます。
LLAMMAを採用した清算メカニズム
crvUSDが採用しているソフト清算のLLAMMAベースの仕組みはCDPのスケーラビリティを向上させる手段としてハード清算を回避できる点で幾分か優れています。競合プロジェクトも真似しだすと思いますね。
Curveがやるからこそ価値がある
DeFiエコシステムの中で最前線を走り続け、ステーブルコインのスワップに長けた設計になっているCurveだからこそ後ろ盾として自分達のエコシステムを活用して大きく成長できる可能性があります。
まとめ
ステーブルコインにおける「成功」とは何を表すのか人それぞれなことはもちろん前提として、PMFを一つの目標とするのであればランキング上位のFiat建てステーブルコインの発行量を上回ることがいちばんの成功と言えるでしょう。
正直なところ現在のCrypto建てステーブルコインのエコシステムや仕組みは不完全で、壊れているとも捉えられるのでいまの現状を大きく変えない場合は上記で述べた成功に近づく可能性は限りなく低いでしょう。なぜなら、
貸し出しの代わりにステーブルコインを「購入」できるようになるのか
ここの部分が突破できないとCDPとしての勝ち目が薄いように感じるからです。ステーブルコインに関しては、市場規模がかなり大きいからこそ新たな仕組みに対する研究はずっと行われ続けています。その中でいい解決策は見つかるのでしょうか。
皆さんも前のステーブルコインに関する記事などを読んで考えてみてください。